足元の長期金利の高止まりの原因をトランプ氏の経済政策に求める見方は多いが、実態は米国の個人消費の堅調さゆえである。ただ、移民流入、貯蓄率の低下などの下支え要因は今後剥落していく。2025年にFRBは複数回の利下げに踏み切り、長期金利の4%割れもあるかもしれない。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
インフレ期待高まり
長期金利上昇
米大統領選においては、トランプ氏が圧勝し、上下院選でも共和党が勝利した。トランプ氏が掲げたアジェンダについては、議会を通過しやすくなるとの思惑から米国長期金利が上昇し、10年債利回りは4.5%付近まで上がっている。
アジェンダの目玉とされているのが2025年末に期限切れとなるトランプ減税の継続(恒久化)であり、その財源として諸外国への関税賦課も俎上に載っているため、景気拡大の観点からも、輸入物価上昇の観点からもインフレをイメージしやすくなっている。
原油先物価格はトランプ新政権によるシェールオイル増産への思惑も相まって下落傾向にあり、本来、インフレ期待は収縮しやすいのだが、米国10年債利回りに内包されるブレークイーブン・インフレ率(BEI)は高止まりており、市場参加者におけるインフレ期待の高さがうかがえる。
ただ、時間軸について考えてみた場合、26年以降の減税継続に係る議会での審議等は25年半ば以降となる公算が大きい。関税賦課による輸入物価上昇についても単年のものであり、つまり一時的なものである。相手国から報復関税を課せられた場合は米企業の業績に悪影響が及び、むしろ景気減速になる可能性もあることを考えれば、実際、どこまでインフレが再過熱するのかについては不透明なところである。
ここで、米国2年債利回りに注目した場合、一時4.35%まで上昇しており、これは12月に米連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げをした場合の、利下げ後の短期金利にほぼ等しい。
つまり、市場は12月に利下げを行った後、25年については(26年についても)ほぼ追加の利下げが行われないとの思惑に支配されており、これが25年末に俎上に載るトランプ新政権の財政政策だけをよりどころとしたものと考えるのには無理がある。
では、ほぼ追加の利下げが行われないとの思惑のよりどころとなるものは何か。次ページで検証していく。