バイデン氏の意外な中東和平戦略:トランプ氏と協力Photo:The Washington Post/gettyimages

【ワシントン】米バイデン政権が任期終盤に中東和平合意の仲介を目指す中、意外な協力相手としてある人物が浮上している。ドナルド・トランプ氏だ。

 米ホワイトハウスが仲介し、26日に発表されたレバノンの親イラン組織ヒズボラとイスラエルの停戦合意について、トランプ氏と側近らは批判せず、この外交上の進展に関してほぼ沈黙を保っている。一方でバイデン政権高官らは、より困難な課題となるパレスチナ自治区ガザでの停戦に焦点を移している。

 トランプ氏の沈黙は、ジョー・バイデン大統領の取り組みに対する賛同を示すまれな例であり、双方に利益をもたらすかもしれない。退任を控えるバイデン氏はレガシー(政治的遺産)となる外交政策の成果を得ることができ、トランプ氏にとっては対処すべき世界的な危機が一つ減ることになる。

 しかし、この一時的な協調関係は急速に崩れる可能性もある。

 米当局者は、イスラム組織ハマスが来年1月20日のバイデン氏退任前にガザでの停戦に合意する兆しを示していないことを認めている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、共和党のトランプ新政権がハマスとの戦争を継続させるためにさらなる自由裁量を与えてくれることを期待して、民主党政権の任期が終わるのを待つ可能性もある。ネタニヤフ氏は以前からトランプ氏を好む姿勢を示してきた。

 シンクタンク、国際危機グループの中東専門家マイケル・ハナ氏は、ネタニヤフ首相が戦闘の恒久的停止に消極的であるため、「トランプ氏の政権移行チームとの調整に関係なく、ガザでの停戦合意は実現しないだろう」と懐疑的な見方を示した。