キャシー(53)は「彼はとてもかわいいけどシンクの中で暮らしてほしくはない」と語る。

 キャシーはシンク・フロッグを「魔法のようで神秘的なカエル」と考えていると説明した。キャシーは動画の中で、「私には王子様がすでにいるけれど、もしかしたら彼は他の誰かを待っているのかもしれない」とジョークを飛ばしている。

 しかし、シンク・フロッグはなかなか出て行こうとしなかった。2人は排水管を分解してみたり、シンクに水を流してみたりと、さまざまな方法で救助を試みたが、このたくましいカエルは時々顔を出したりしながらそこにとどまった。

「ある朝、キャシーがシンクの中でカエルのふんを見つけた。彼はオーバーフロー穴から頭を突き出していた」とブライアンは説明する。

 最終的にシンク・フロッグは自由の身になった。リッチマン夫妻がその脱出劇をTikTokに投稿すると瞬く間に話題となり、160万回も再生された。

 シンク・フロッグは、フロリダ州の侵入種であるキューバズツキガエルだと判明。その結果、リッチマン夫妻は法的に選択を迫られた。シンク・フロッグを安楽死させるか、ペットとして飼うかの選択だ。

キューバズツキガエルキューバズツキガエル Photo:123RF

 ブライアンは「カエルは私たちのシンクから『誕生』したので、私たちはペットショップ『ペットスマート』で一番大きいテラリウムを購入し、自分たちの庭のように飾り付け、このデラックスなテラリウムに彼を移した」と冗談交じりに説明する。「彼のアクロバティックな動きを観察したり、与えた餌を狩る様子を見たり、それを録画して共有したりしている」

 ブライアンにとってシンク・フロッグの出現は単なる偶然以上のもので、まるで「神の思し召し」だったという。

 ブライアンとキャシーは大学時代に交際していたが、宗教の違いが原因で別れた。その後の10年間で2人とも人生の変化と離婚を経験した。ブライアンがオンラインでキャシーを見つけ、遠距離恋愛を経て2人は結婚した。

「キャシーは今でも私のことを『テネイシャスB(粘り強いブライアン)』と呼ぶ。2人の関係を諦めなかったからだ」と、ブライアンは語る。

 カエルは新しい始まり、移行、そして知恵の象徴だ。こうした象徴的な意味が、まさに転換期にあったリッチマン夫妻の心に響いたのだ。

 2人は理学療法士としてパンデミックを体験し、燃え尽き症候群を経験した。2人とも最近退職し、新たなスタートを切る必要性を感じていた。

 ブライアンは「私たちが救いを必要としていたとき、シンク・フロッグが私たちの生活に入り込んできた」と語る。以来、リッチマン夫妻は小さなカエルの冒険を描いた絵本など、新しい創造的なプロジェクトにエネルギーを注いでいる。

 彼らの物語は世界中の視聴者の共感を呼び、シンク・フロッグの活躍に元気づけられたという声も寄せられている。ブライアンは「私たちはソーシャルメディアを活用し、シンク・フロッグとその知恵を必要としている人、人生の転機にある人、ただ笑顔が必要な人をつなげたい」と述べている。

(翻訳:ガリレオ)

※当記事は「ニューズウィーク日本語版」からの転載記事です。元記事はこちら
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