「おしっこのしすぎで絶滅」
「背中が無防備で絶滅」
「方向性を見失って絶滅」……

思わず気になる「絶滅理由」を紹介する『わけあって絶滅しました』シリーズが巷で話題となっている。第1弾が発売されるやいなやテレビ・ラジオで話題となり、第2弾の『続 わけあって絶滅しました。世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』と合わせて69万部のベストセラーとなった。

児童書として発売された本書だが、意外なことに「生存競争の過酷さ、生き残りのコツがビジネスの参考になる」とビジネスマンからの共感も集めている。生き物達の驚くべき進化、そして襲いかかる理不尽な環境の変化が、現代社会とどう重なるのか。今回特別に『わけあって絶滅しました』の内容を一部抜粋・編集してお届けする。

「口の中で子育て」するカエル
イブクロコモリガエルを襲った悲劇

じつは、人間が悪意なく絶滅させてしまった生き物は、たくさん存在します。オーストラリアに生息していた「イブクロコモリガエル」もそのひとつ。1983年に絶滅したイブクロコモリガエルは、口の中で子育てをする変わったカエルでした。

『わけあって絶滅しました』では「イブクロコモリガエル本人が、なぜ自分が絶滅したか語る」という、ちょっと変わった形式で、かれらの絶滅理由を紹介しています。

きっと、かれらのことを初めて知る人も少なくないはず。「どうすれば生き物を絶滅させずにすむか」を考えるのは難しいかもしれませんが、まずは「知る」ことから絶滅を考えてみるのもいいかもしれません。

人間のせいで絶滅?<br />「胃の中で子育て」するカエル<br />イブクロコモリガエルを襲った悲劇
カビが生えて絶滅
イブクロコモリガエルさん
 

ちょっとゲロ美~! ゲロ蔵と遊んでないで手伝いなさい! 母さんあと20匹も口から出さないといけないんだからね!
 あら、すみませぇ~ん、おさわがせして。あたしら胃の中で子育てするんです。ほら最近ぶっそうでしょう? だから卵をうんだら飲みこんで、大きくなってから外に出してるんです。
 カエルだけに「ゲロゲロ」って。もうヤダぁーあはは! ま、病気で全滅したんですけどもね。朝鮮半島から来たカエルツボカビ症っていうのが超はやって。
 ほら、あたしらカエルって皮ふでも呼吸してるじゃないですか? なのに全身の皮ふにカビがブワーって広がって、「もう息できなーい」ってなわけで。
 はぁ~まったく、なんのために子ども飲みこんだんだかわかりゃしない!

イブクロコモリガエルは、胃の中で子育てをしていたカエル。

卵を飲みこむと胃液の分泌が止まり、子育てのあいだ母親は絶食する。そして、胃の中で卵がふ化し、オタマジャクシからカエルになると、口から出てくる。

発見当初から数が少なく、生息地は標高350~800mの川沿いに限られていた。そこへダム建設や森林伐採があって数を減らし、人間がもちこんだカエルツボカビがとどめをさしたようだ。

(本原稿は丸山貴史著『わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』の内容を編集して掲載しています)