【社説】韓国の戒厳令騒ぎで見えた希望Photo:Bloomberg/gettyimages

 韓国では3日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が根拠のはっきりしない戒厳令を布告したが、この戒厳令が短時間で解除されたことで、同国の民主主義はここ数十年で最大の試練を乗り越えた。韓国の国会は戒厳令の布告後すぐに戒厳令の解除要求決議を190対0で可決し、尹氏はこの判断に従った。尹政権は閣議を開き、4日午前4時半ごろに戒厳令の解除案を承認した。

 尹氏が3日深夜に突然行った演説は、韓国国民を驚かせた。尹氏はその中で、「北朝鮮の共産主義勢力の脅威」から国家と「自由の憲法秩序」を守るとともに、「北朝鮮を支持する反国家勢力」を排除するため、戒厳令を布告すると発表した。尹氏は、こうした脅威の詳細を明らかにせず、誰を脅威と捉えているのかも示さなかった。今回の戒厳令布告は、弱体化が進む政権を救おうとする同氏の無謀な賭けであるかのようだった。

 尹氏が勝利した2022年の韓国大統領選は、得票差が1%にも満たない接戦だった。韓国の政治は時には米国と同じくらい分裂しているようにも見える。過半数を占めていた野党が今年4月の総選挙でさらに議席数を伸ばし、尹大統領の支持率は20%を下回っている。

 尹氏は今月3日、野党が予算案の削減を求めていることや、政府高官を弾劾しようとしていることを激しく非難した。同氏は、国会が「犯罪者の巣窟」になっており、「自由民主主義体制を崩壊させる怪物」になっていると主張した。