トランプ次期政権の対中政策
通商と台湾に要注目
11月に行われた米大統領選挙でトランプ共和党候補が圧勝し、議会両院も共和党が過半数を占めた。来年1月20日には、トランプ第2次政権が発足するわけであるが、トランプ氏は、前回当選時と比べても、迅速かつダイナミックに、閣僚を含めた次期政権人事の検討や策定を進めているように見受けられる。
トランプ第2次政権期における米中関係という観点から見るとき、影響度という点で筆者が注目しているのが通商と台湾である。
通商に関して、トランプ氏はすでに、大統領就任後、中国の全ての商品に対して10%の追加課税を科すと発表。その理由として、中国からメキシコなどを経由し、合成麻薬「フェンタニル」が米国に流入していることを挙げている。
米商務省の統計によれば、2023年の米中貿易総額は5750億ドルで、過去最高を記録した2022年の6906億ドルと比べて16.7%減少。内訳を見ると、米国から中国への輸出が1478億ドル(4%減)、中国から米国への輸出が4272億ドル(20.3%減)ということで、米国の対中赤字は2800億ドル程度ある。
トランプ氏は大統領選前、中国の全ての商品に対して60%の追加課税を科すと主張してきた。トランプ陣営として、MAGA(Make America Great Again)を実現するという観点から、巨額の対中赤字が是正されるまで、関税を科し続けるというスタンスもあらわにしている。
仮にトランプ陣営が公約通りの行動に出れば、中国側は報復措置に出るのが必至である。再度の通商摩擦が米中それぞれの経済、及び日本を含めた第三の国や地域にどう波及するかを注視する必要があろう。
台湾に関しては、トランプ氏による「現状変更」につながるような言動や政策、そしてその「振れ幅」に注目したい。バイデン現政権は、武器売却などを通じた台湾の防衛力強化、議員や政府元高官などの派遣や交流を通じて台湾との関係を強化してきたが、基本的には「一つの中国」政策にコミットし、一方的な現状変更に反対する姿勢を貫いてきた。