APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に出席するために訪れていたペルーで、習近平国家主席と初の首脳会談に臨んだ石破茂首相APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議に出席するために訪れていたペルーで、習近平国家主席と初の首脳会談に臨んだ石破茂首相 写真:中国通信/時事通信フォト

日本側が再三要求してきた
短期滞在ビザ免除が発表

 日中関係といえば、経済関係、安全保障、歴史認識、国民感情、台湾問題など、常にさまざまな分野が複合的に作用し合い、ニュースや動向を見る者、実際に中国社会・市場と付き合う者、日中外交関係を公の立場でつかさどる者を困惑させる。人々はそれらを「構造的問題」と呼ぶ。日中関係が一筋縄には進まない、各課題が簡単に解決しないゆえんである。

 2023年に入り、約3年続いた所謂「ゼロコロナ」が実質解禁されると、日中間の往来も徐々に再開されるようになった。ポストコロナ期においても、構造的問題は両国の関係者に襲い掛かってきているわけであるが、目の前の、切迫した課題としては、主に3つあったように思われる。

 1つ目が、日本産水産物の対中輸出禁止問題。2023年8月に福島第一原発の処理水の海洋放出が始まって以来、中国政府はこれを問題視し、日本産水産物の輸入を禁止してきた。

 2つ目が、2014年に施行され、2023年に改正された「反スパイ法」に基づく邦人拘束の問題である。分かっているだけでも、この期間、計17人の日本人が同法違反容疑で拘束されている。直近では、9月に深センの日本人学校で日本人男児が襲撃され、死亡するという残酷な事件が発生し、治安の悪化や景気の低迷を背景とした無差別殺傷事件が急増している。邦人の安全確保という問題が、従来以上に外交問題化してきている。

 3つ目が、日本人への中国短期滞在ビザの再開問題である。コロナ禍前、日本籍保有者は、シンガポール、ブルネイ籍保有者と共に、15日以内の滞在であればビザ免除が付与されていた。コロナ禍が明け、両国民にはビザ免除措置が再開されたが、ドイツやフランスといった西側諸国を含め、他の多くの国民にビザ免除措置が発表されるなか、日本だけが取り残されてきた感は否めなかった。