米データブリックス急成長、「戦略的手術」が奏功Photo:Bloomberg/gettyimages

 アリ・ゴディシ氏は、スウェーデンで大学に通っていた頃、経営難のテクノロジー企業を救済するために雇われた最高経営責任者(CEO)の記事を読んだ。それは医者である両親が彼の子ども時代から行っていた「手術」を思い起こさせた。

「大企業を『患者』とみなせば、自分が手術を施すことで、極めて健康かつ成功した状態にもっていける。その事実に心が躍った」と彼は言う。

 ゴディシ氏は現在、企業向けのデータ分析基盤を手がける米データブリックスのCEOを務めている。同社はいつの間にかシリコンバレー屈指の急成長スタートアップ企業へと上り詰めた。創業11年の同社は、ベンチャーキャピタル(VC)のアンドリーセン・ホロウィッツやスライブ・キャピタルといった投資家から100億ドル(約1兆5700億円)を調達する。企業価値は今や620億ドルと評価されている。17日発表したこの新たな資金調達はVC史上最大級の規模だ。

 データブリックスがここまで大きくなったのは、ゴディシ氏が会社の健全性を守るために自ら施した「戦略的手術」のおかげだ。2016年の経営トップ就任後、それまで無償提供していたソフトウエアのアップグレード版を有料化し、事業を立て直した。また2年前に投資家から効率化を求められた際は、新規採用を抑えると共に「R2-D2」と呼ばれる人工知能(AI)ボットを社内で開発し、生産性を向上させた。

 現在、米大手企業の一部では、データサイエンティストが同社のソフトウエアを利用して大量の収集データを分析している。このツールはAIの台頭で今まで以上に価値が高まっている。例えば、米薬局チェーン大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは、データブリックスを利用して処方箋の調剤のための在庫予測を行う。米電気自動車(EV)メーカー、リビアン・オートモーティブは、電動トラックの電池寿命の向上にこれを活用している。