9月12日、米オープンAIはかねて開発を進めていた新AIモデル「OpenAI o1」を発表した。論理的思考力に長け、博士号を持つ人間をしのぐ実力を有する。特集『生成AI 大進化』の#7では、AI活用に関して最先端で情報発信やコンサルティングを行うTHE GUILD代表の深津貴之氏にo1について聞いた。(ダイヤモンド編集部 深澤 献)
順序立てて考えてから答える
“非同期のチャットボット”の一歩目
――OpenAI o1については“Q*(Qスター)”や“ストロベリー”というコードネームの頃から注目されていましたが、実際に登場して、第一印象はいかがでしたか。
一番大きなポイントとしては、今までのChatGPTはプロンプトを入れると即座に答えを返してくる1to1のキャッチボールが特徴でしたが、o1はいわゆる“非同期のチャットボット”の一歩目だなという印象を受けました。
技術的には「リーズニング(reasoning)」、つまり問題にいきなり取り組むのでなく順序立てて考えてから答えるというものではあるんですけど、インターフェース上で即応するのではなく何ステップか推論を重ねてから答えを返すというのは、「明日までに調べてやってきます」ということができるようになるための一歩目といえます。
――ChatGPTに初めて触れたときには、その即応性に驚いたわけですが、o1は推論を重ねるCoT(Chain of Thought:思考の連鎖)が特徴で、博士号を持つ人間をしのぐほどの実力を有しながらも、従来のGPT-4oに比べてレスポンスが遅いといわれます。逆にそれは面白い視点ですね。
今回のo1の純粋な技術としての主役は複数ステップで考えながら進んでいく「リーズニング」であって、あくまで僕なりの解釈、あるいは僕なりの注目ポイントですけどね。
複数の作業を並行的にやることもできそうですよね。「資料1をやっておきます。資料2もやってます。資料3は今終わったのでお見せします」みたいな、より複雑で高度な仕事ができるようになってきました。
会話形式で即座に答えを返すChatGPTと違い、推論を重ねてじっくり考えるのがo1であり、そこに新しいAIの可能性を感じたという深津氏。その後、実際に使っていく中で、さらにo1が切り開いていく未来の姿に想像を膨らませる。次ページ以降では、深津氏が語る、AIがもたらす楽観的な世界と悲観的な世界の両シナリオを披露する。