中国は通貨政策の綱渡りを強いられている。経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)が人民元安を示唆し、資本流出の懸念がつきまとう中、中国当局は相場の急変を警戒している。人民元の最近の値動きは小幅ながら象徴的だ。ここ数カ月は人民元の対ドル相場が1ドル=7.3元を下回ると、相場を下支えするためにしばしば中国国有銀行が介入していたが、当局はさしあたりこの水準割れを容認している。現在は7.33元近辺で取引されており、1日の許容変動幅の下限に迫っている。人民元は中国人民銀行(中央銀行)が毎日設定する基準値の上下2%まで変動が許容されている。だが人民元急落の可能性が高いと投機筋が考えているとしたら、それは見当違いだ。人民銀は通貨の安定維持を約束し、実行してもいる。過去最大規模の短期証券を発行して香港で人民元の流動性を吸収したのはその一環だ。当局はまた、国際金融取引に関する規則を変更し、中国企業が国外で借り入れをしやすくしたため、人民元を外貨に換金する需要が減った。