やってもやっても仕事が終わらない、前に進まない――。そんな状況に共感するビジネスパーソンは多いはずだ。事実、コロナ禍以降、私たちは一層仕事に圧迫されている。次々に押し寄せるオンライン会議やメール・チャットの返信、その隙間時間に日々のToDo処理をするのが精いっぱいで、「本当に大切なこと」に時間を割けない。そんな状況を変える一冊として全米で話題を呼び、多くの著名メディアでベストセラー、2024年年間ベストを受賞したのが『SLOW 仕事の減らし方』だ。これからの時代に求められる「知的労働者の働き方」の新基準とは? 今回は、本書の邦訳版の刊行を記念して、その一部を抜粋して紹介する。

気分転換が上手な人が「月1回」やっている“秘密の習慣”Photo: Adobe Stock

平日の気晴らしが、仕事の質を高める

 平日の午後に映画館に行くと、心が洗われる感じがする。

「今頃みんな仕事をしているんだ」と思いながら映画を見にいくのは、非日常的な体験だ。変わり映えのしない日々の憂鬱から心を解き放ってくれる。

 この精神的な浄化作用は、定期的に取り入れる価値があると思う。たとえば月に一度、午後に映画を見にいくと決めて、あらかじめカレンダーに定期登録しておくといいだろう。

 心のなかだけでなくカレンダーに書いておけば、ほかの予定に邪魔されずにすむ。30日のうち1日だけ、午後にいなくなったとしても、たいていの職場では誰も気にしないはずだ。誰かに訊かれたら「ちょっと私用で」と答えておけばいい。それは事実だからだ。

「たまに平日の午後に休む」くらいがちょうどいい

 もちろん重要な場面に影響しないように、合理的な範囲で計画を立てる必要はある。緊急事態が発生したり、特別に忙しい週にあたった場合は、別の日にずらしてもいい。

 なんだか後ろめたい気がするなら、これまで夜間に仕事をしたり週末にメールを書いていた時間のことを思いだそう。ときどき平日の午後に休むくらいで、ちょうどバランスがとれるのではないだろうか。

 映画に興味がないなら、ほかの活動でも同じ効果は得られる。博物館を訪れてもいいし、ハイキングに行ってもいい。ここでのポイントは、平日にちょっとした気晴らしを取り入れるだけで、平坦な労働のストレスから解放されることにある。

(本稿は、『SLOW 仕事の減らし方~「本当に大切なこと」に頭を使うための3つのヒント』(カル・ニューポート著、高橋璃子訳)の内容を一部抜粋・編集したものです)