心を開かない部下に「傾聴」するだけじゃラチが明かないワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

1on1をいくら積み重ねても、なかなか心を開いてくれない部下。おそらく、部下も「上司にどこまで話していいのか……」という悩みもあるのだろう。そんな上司と部下のもどかしい距離感を縮める方法を紹介する。本稿は片岡裕司、山中健司著『なぜ部下は不安で不満で無関心なのか メンバーの「育つ力」を育てるマネジメント』(日経BP日本経済新聞出版)より一部を抜粋・編集したものです。

メンバーが安心して対話するには
マネジャーも「自己開示」を

 マネジャーと対話をすると、「これが自分の価値観なのか?」「キャリアの目的は本当にこれでいいのか?」「マネジャーにどこまで話してよいのか」など、メンバーが不安や難しさを感じる場面もあると思います。

 そんなメンバーの不安を解消するためのポイントは2つあります。それは「自己開示」と「共感的傾聴」です。それぞれ説明していきましょう。

 1つ目のポイントは、皆さんの「自己開示」です。

「昔、野球部に所属していて、そのときの仲間と今でも集まっている。部活は弱かったけど、県大会で1勝するために、お互いに支え合いながらがんばったときの一体感が忘れられない。だから、自分はそんなチームをつくる人でいたいんだよね」

「高校生のとき、生徒会長をしていて、従来の文化祭から内容を大きく変えた経験があったんだ。実は、大きなことを考えて企画するのが好きなんだよね。今思えば、この経験が『皆がアッと驚く、楽しめる機会をつくる存在でいたい』という自分のキャリアの目的につながっていて、この仕事をやっているんだと思う」

 このように、皆さん自身のキャリアの目的やその背景を話してみましょう。

 そして、自身がキャリアの目的を探求する過程で感じた不安、難しさなども伝えてあげてください。

「キャリアの目的を昔から持っていた風に語ったけれど、これはマネジャーになってうまくいかずに悩んだときに、先輩からアドバイスを受けて考えたことなんだよね。そのときは半年くらいは、モヤモヤしていたな。最初、キャリアの目的といわれても、本当にわからなかった。自分の価値観といわれても出てこなかったし(笑)。友人や先輩、家族と話す中で、やっとうっすら見えてきて。そこから実際に行動し始めて徐々にしっくり感が出てきた気がする」

 このように皆さんが自己開示することで、メンバーも話しやすくなります。そこから、不安の背景や難しさを感じているポイントについて対話しながら、一緒に探求することでキャリアの目的が少しずつ描けていくでしょう。