「部下をダメにする」1on1と「グングン成長させる」1on1の決定的な違い写真はイメージです Photo:PIXTA

いま、日本企業で「組織」に対する関心が高まっている。社内でのコミュニケーションを通して社員のやる気を生み出す施策をとる会社は増えているという。一体、どのような方法が社員のやる気を引き出すのか。本稿は、高木穣(※高の字は、ハシゴダカ)『職場にやる気が湧いてくる対話の技法 令和の管理職の必須スキル』(同文舘出版)の一部を抜粋・編集したものです。

悪化してきた
日本企業の人間関係

 いま、「組織」に対する関心が高まっています。欧米に比べると遅いですよね。私がコンサルタントになった1990年代から、OD(組織開発)コンサルタントや部門が欧米の組織にはあったようですから。

 むかし、トヨタ出身の方から聞いた話では、1980年代の日本が元気のいい時代にアメリカが日本に視察団を送り、「なぜ日本企業は元気がいいのか」を探りにきたらしいです。そしてその結論は「現場が強い」だったそうです。つまり、現場の結束力の強さを感じとって帰ったようです。その結果、アメリカは「チームワーク」に力を入れはじめました。

 日本ではその後バブルがはじけ、そこから欧米を真似して成果主義・個人主義の方向へ舵を切り、社内のまとまりは薄くなってきています。そこに昨今、パワハラ・セクハラなどハラスメント防止の風潮で、お互いの間で過度に気をつかい出し、個人情報保護の流れもあって私的な面には立ち入りづらくなってきました。

 そこへ来てコロナ。テレワークは増えて、いい面もたくさんありますが、コミュニケーションという点では、以前よりやりにくいことが増えました。退職する社員も増えてきていますので、それをつなぎ止めるためにも多くの会社でコミュニケーションをとる施策を増やそうとしています。

社員のやる気を生み出すには
個人の動機づけが必要

 実は組織で「やる気」という時、モラール(士気)とモチベーションの2種類の意味があります。

 モラールというのは集団の士気です。そして、モチベーションは個人の動機づけです。社員がみな上の指示のまま動くことを求められた昭和時代はモラールという言葉を耳にしましたが、価値観の多様化が前提となった現代では聞かれなくなりました。個人に着目するという意味で「モチベーション=動機づけ」が必要なのです。

 人それぞれ、モチベーションの上げ方には違いがあります。そのため、個別にコミュニケーションをとりながらモチベーションを上げてもらう必要があります。コミュニケーションの問題とモチベーションの問題はかなりリンクしています。そのことを直感的に感じている組織は施策を展開しはじめています。