創業130年超の老舗企業を事業承継、歴史ある自然派かまぼこの価値を発信

130年超の歴史を持つ、廃業寸前だった老舗かまぼこ企業を、「応援したい」という一心で、24歳の女性が後継ぎとして再建――。そんな事業承継ストーリーと、「身体にやさしい・おいしい」を実現した無添加の「古式かまぼこ」で話題を呼んでいるのが吉開のかまぼこだ。(取材・文/大沢玲子)

創業130年超の老舗企業を事業承継、歴史ある自然派かまぼこの価値を発信代表取締役社長 林田茉優氏

 同社は1890(明治23)年創業。3代目・吉開喜代次氏が、顧客からの「安心・安全なかまぼこが食べたい」といった声を受け、約8年間の試行錯誤の末、つなぎとなるリン酸塩、保存料、でんぷん、卵白などを一切使わない無添加の画期的なかまぼこを生み出す。

 健康志向の高まりを受けてファン層を広げていくが、2018年6月、吉開氏が体調を崩し、後継者不在のまま休業。現・代表取締役社長の4代目・林田茉優氏が同社に出合ったのは大学在学中、既に休業状態だった19年のことだ。

約60社回り後継者探し
苦戦するも復活を遂げる

「大学でベンチャー企業論を専攻し、中小企業の後継者問題の深刻さを学ぶ中、先代の話を聞き、これまでの歴史と伝統、かまぼこ作りに懸ける職人としての姿勢と誇りに触れ、『絶対に途絶えさせてはいけない』との思いから、後継者探しを開始しました」と林田氏は振り返る。

創業130年超の老舗企業を事業承継、歴史ある自然派かまぼこの価値を発信つなぎの役割を担うでんぷんや卵白を使わないため、弾力を出すため寝かせた上で、蒸し器で蒸す

 だが、そこから約3年間、60社ほど巡るも苦戦。ようやく後継者候補が見つかり株式譲渡の直前までたどり着くが、工場再開に当たり近隣からのクレームが発生し頓挫。

 もはや廃業やむなしという状況に諦めかけるものの、「吉開のかまぼこの復活を待っているファンがいる」と奮起。工場の近隣住民と話し合い、実際のかまぼこ作りの技術を学びつつ、活動を継続。現在、同社の親会社であるIT企業・フロイデに出合い、背中を押される形で21年12月、自らトップに立った。

 老舗企業の事業承継で難しいのが、「何を守り、何を変えるか」だ。林田氏は「『健康社会に貢献する』という先代が打ち出した理念や技術を大事に引き継ぐ一方で、製品の価値をあらためて可視化していく“リブランディング”に取り組みました」。

贈答用にフォーカスし
パッケージなども刷新

 その一つが原材料の詳細な開示だ。うたったのは「原料の原料まで極めた自然派かまぼこ」。「古式かまぼこ」は、みりんなどの2次原料まで無添加を追求し、かまぼこ板も木の匂いやアク・ヤニの出ない高品質な板を使用するなど徹底。こうした職人としては当然のこだわりを、消費者目線で発信し、認知を広めていく。