「もっときれいに」「なるべく早く」――悪意のない指示がなぜ、部下との深刻なすれ違いを生むのか。日本人が無意識に多用する“ズレを生む言葉”の正体とは
SNSでビジネススキルについて情報発信を行い、総フォロワー数が37万人を超える「にっしー社長」こと西原亮氏の著書、『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』をもとに、誰でも「しごでき」になれる令和の仕事の基本を解説する。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬)

仕事ができる人は「なるべく早くやって」と言わない。ではどう言う?

「伝わっている」という思い込みが組織を壊す

上司と部下のすれ違いが起きるとき、多くの場合、上司は「ちゃんと伝えたはずだ」と思っている。だが、問題は指示の「内容」ではなく「言葉の選び方」にある。

日本語には、話し手の感覚を手軽に伝えられる便利な言葉がある。形容詞と副詞だ。もっときれいに資料を修正してなるべく早くやっておいて――こうした言葉は、自分の頭の中にあるニュアンスを伝えるのに大変便利だ。しかし部下は、その「きれい」や「早い」を、自分なりの基準で受け取る。上司が想定した仕上がりと、部下が目指した仕上がりが一致しないのは、ある意味で当然のことなのだ。

「ズレ」は悪意ではなく、言葉の構造から生まれる

「もっときれいに資料を修正して」

「なるべく早くやっておいて」。

日本人が最も多用し、上司と部下の間に最も深刻な「認識のズレ」を生む言葉。それが、「形容詞」と「副詞」です。

これらの言葉は、自分の頭の中にあるニュアンスを伝えるのに大変便利です。しかし、部下に指示を出す際、この便利な言葉を使った瞬間に、ズレは確定すると思ってください。

「きれい」や「早い」の定義が、他人と一致することはないからです。

「ズレ」は、部下の能力や理解力の問題ではない。形容詞と副詞には、話し手の「主観的な基準」が埋め込まれており、聞き手はその基準を知るすべがない。「きれい」が意味するのは、余白を整えることか、フォントを統一することか、グラフを作り直すことか――受け取る側によって、まったく異なる作業が走り出す。

だからこそ、できる上司は形容詞・副詞をそのまま使わない。たとえばなるべく早くではなく今日の17時までにもっときれいにではなくグラフの色を3色以内に統一してと言い換える。主観を、誰もが同じ意味に受け取れる「数字」や「具体的な動作」に置き換えることで、ズレは起きようがなくなる。

指示の「解像度」を上げることが、上司の本当の仕事

部下が期待と違う動きをするたびに、なぜ言った通りにやらないのかと感じる上司は多い。しかし、「言った通り」と「伝わった通り」は、形容詞を使った瞬間から別物になっている。

指示の精度を上げることは、部下を細かく管理することではない。むしろ逆だ。具体的な言葉で伝えるほど、部下は余計な確認をせずに動けるようになり、上司は余計なフォローに時間を使わずに済む。「伝わる指示」は、双方の時間を守る技術でもある。

今日から、自分の指示に形容詞と副詞が含まれていないか――それだけを確認する「一秒の習慣」を持つだけでいい。

(本記事は、書籍『コンサル時代に教わった 仕事ができる上司の当たり前』をもとに作成しました)