【一発アウト】税務署に絶対言ってはいけないこととは?
人生100年時代、お金を増やすより、守る意識のほうが大切です。相続税は、1人につき1回しか発生しない税金ですが、その額は極めて大きく、無視できません。家族間のトラブルも年々増えており、相続争いの8割近くが遺産5000万円以下の「普通の家庭」で起きています。
本連載は、相続にまつわる法律や税金の基礎知識から、相続争いの裁判例や税務調査の勘所を学ぶものです。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超えている。大増税改革と言われている「相続贈与一体化」に完全対応の『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】 相続専門YouTuber税理士がお金のソン・トクをとことん教えます!』を出版する。遺言書、相続税、贈与税、不動産、税務調査、各種手続という観点から、相続のリアルをあますところなく伝えている。2024年から贈与税の新ルールが適用されるが、その際の注意点を聞いた。
税務署に「絶対言ってはいけないこと」とは?
本日は「相続と税務署」についてお話をします。年末年始、相続について話し合った方もいらっしゃるかと思います。ぜひ参考にしてください。
本日のテーマは、税務署の職員が使う「嘘を見破る質問術」です。
2023年度の調査によると、一度調査に選ばれてしまうと約84%の人が追徴課税になっています。つまり、8割以上の確率で何かしらの間違いを指摘され、追加で税金を払うことになります。これだけ追徴課税が多い理由の大きな要因は、調査官の質問が巧妙だということです。
2023年度には、8556件の相続税の税務調査が行われ、そのうち7200件が申告漏れ等の件数で、約84%の人が追徴課税になっています。大変高い確率です。「調査をやらせてください」と言われてしまったら、何かしら間違いを見つけられていると思っても過言ではないかもしれません。
税務調査で間違いを指摘され追徴課税になれば、罰金的な税金もかかります。納めた税金が少なかった場合は過少申告加算税(5~15%)。そもそも申告すらしていなかった場合は無申告加算税(10~20%)。仮装隠蔽により税金を故意に逃れようとした場合は重加算税(35~40%)と重いペナルティが課せられます。100万円の税金が135万円、140万円になるイメージです。2023年度では、追徴課税になった人のうち約14%が重加算税を課されています。
私は相続専門の税理士として、多くの方の相続税の相談や申告をお手伝いしてきましたが、税務調査を甘く見ている人が多いと感じます。しかし税務署は甘くありません。嘘や偽りはほとんど見抜かれます。
その理由は、税務調査のときにされる質問が非常に上手だからです。その極意は「外堀から埋める」。税務署の職員は、いきなり聞きたいことをズバッと聞いてくるのではなく、まず外堀から埋めて納税者の言い逃れをできないようにしてから、核心部分を聞いてきます。
調査をたくさん立ち会ってきて感じるのですが、税務調査は将棋と似ています。質問されることは一見税金に関係ないようなことばかり。納税者からすると「なんでそんなこと聞くのかな」と思うようなことなのですが、これは将棋のように、最終的に何を取りたいかが分かっていて、そこに向けて外堀を埋めてくる感覚があります。ではここから、実際の税務調査の流れをご紹介します。