棺桶の中で死について考えた…初老夫婦が「入棺体験」を経てたどり着いた“真の終活”とは?『おふたりさま夫婦、老活はじめました。~どうなる!?私たちの老後~』(c)堀田あきお&かよ/ぶんか社

漫画家の堀田あきお、かよ夫婦が、自分たちの「老活」や「終活」を描いたコミックエッセイ『おふたりさま夫婦、老活はじめました。~どうなる!? 私たちの老後~』(ぶんか社)。2人の体験をもとに老後について考える連載の最終回では、“死ぬ準備”として「入棺体験」に参加する。実際に棺桶に入ってみた夫婦の感想は?(ダイヤモンド・ライフ編集部)

「生きているうちに予行演習」
入棺体験の会場で見た意外な光景とは…

「終活」の一環として最近注目されているのが、生きている間に棺桶に入る「入棺体験」だ。一見、不謹慎にも思えるこのイベント、いったいどんな意味があるのだろうか。

 核家族化などで変化する世の中のニーズに応え、小規模で手頃な価格の葬儀を提供する「小さなお葬式」(株式会社ユニクエスト)でも、入棺体験を実施している。同社HPによると、入棺体験には、「自分の人生について考えるという深い意味がある」とのこと。人生の終わりを体験することで生きることの意味を考えるとは、逆説的で興味深い。

 実際、業者が主催する入棺体験に訪れるのは、高齢者ばかりでなく、30~40代の若い世代も多いという。このことからも、「死は身近なこと」「死は目をそらしてはいけないこと」という価値観が、あらゆる世代に広がり始めていることがうかがえる。

 2000年代に一般社団法人倫理研究所が行った『日本人の死生観に関する意識調査』によると、人の死に関する考え方・価値観についてのアンケート結果では、「人はひとりでは生きていけない」「目に見えるものだけがすべてではない」「先祖とのつながりのもとに今の自分たちがあることに感謝すべき」といったポジティブな回答が多く、死を怖がってタブー視したり、死んだ人のことを考えても仕方がないなどといった達観・無常観を持ったりする人は、少数派だったという。調査結果からわかるのは、生と死が「連続したもの」と捉えられていることだ。

 日本人の「死」の価値観については、その後のコロナ禍や続発する自然災害を通じて、さらにこうした傾向が強まっていると考えられる。

 2人で「終活」を始めることにした「お金なし」「子どもなし」「老化現象アリ」の漫画家夫婦、あきお(62)とかよ(56)は、ふとしたきっかけで「入棺体験」の存在を知る。戸惑うかよを尻目に、「生きているうちに棺桶に入る予行演習ができる」と興奮するあきお。会場に着いてみると、そこには意外な光景が――。果たして、あきおの「死生観」には、どのような変化が起きたのだろうか。

 遺言書、財産の整理、そして老人ホーム……物質面ばかりが取り沙汰される終活とは一味違う、「心の終活」について考えてみよう。