このうち巨人で目立ったのは、若手投手の成長だ。たとえば山﨑伊織は24試合に登板・先発して10勝6敗で防御率2.81、井上温大は25試合登板で8勝5敗、防御率2.76だった。
また、クローザーの大勢までをつなぐセットアッパーでは、2年目の船迫大雅が51試合に登板して防御率2.37の安定した投球を見せた。
巨人OBの内海哲也・投手コーチは堀田賢慎と井上の成長を評価しているというが、私も5年目の左腕・井上がよかったと思う。重心の低い柔らかいフォームでリリース後、左肩がよく入っていて球威もある。将来伸びるのではないか。
巨人の勝因に投手陣の活躍が際立っているが、実績のない若手投手が成長しているのはなぜか。旧知の担当記者によると、内海コーチの存在が大きいという。技術的なことより、気の持ちようについてのアドバイスが効果を発揮しているというのだ。
内海は2018年末、巨人が国内FAで西武の炭谷銀仁朗捕手を獲得した人的補償として西武に移籍。2024年から古巣・巨人の一軍投手コーチを務めている。また、若手投手たちの二軍時代に久保康生・巡回投手コーチから受けた技術的な指導がいま生きているという声もある。
シーズン前半に苦戦が続いた要因は
4番・岡本の得点圏打率の低さ
阿部巨人が勝つことを義務づけられている重圧は十分わかる。しかし、いまの巨人は確実に過渡期を迎えている。私は開幕直後、インターネットの取材に応えて言った。
「チームを変えたい気持ちがあるなら、まずベテラン連中のプライドを傷つけずに処遇を考えろ。決して、ベテランを切り捨てろと言っているんじゃない。夏場からシーズン終盤にかけて、ベテランの力が必要になる時期が必ずある。腐らずに、彼らのモチベーションを保たせつつ、若手を適材適所で起用して抜擢していけ」
「目先の勝利にこだわるな。勝つよりも大事なことは、負けゲームをいかにつくれるかだ。初めての監督としては荷が重いかもしれないが、阿部慎之助よ、これが常勝・巨人の監督ということだ」
(松永多佳倫「巨人改革へ、広岡達朗が阿部慎之助監督に伝えたいこと『ベテラン連中のプライドを傷つけずに処遇を考えるべき』」web Sportiva、2024年4月10日 https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/npb/2024/04/10/post_112/)
巨人はなんとか首位で前半戦を終えたが、オールスター戦直前まで苦戦が続いたのは4番・岡本和真の得点圏打率が低かったからだ。