たしかに前半戦のセ・リーグ打撃全成績を見ると、本塁打は16本とリーグトップの村上宗隆(ヤクルト)を1本差で追い上げ、打点の54はトップだったが、打率.267は低すぎる。

 また近代野球で最も評価される得点圏打率(シーズン終了時)は.286で、DeNAのオースティン(.388)、阪神の大山悠輔(.354)、広島の小園海斗(.341)ら他球団の4番打者に大きく差をつけられている。

阿部監督の一番の誤算は
坂本勇人の不振

 ファンやマスコミは岡本のホームランだけで大喜びしているが、前半戦の主砲・岡本が巨人の足を引っ張ったのは確かである。4番はホームランを打てばいいというものではない。私がいつも言うように、チームの勝利に貢献しないホームランは意味がない。いい例がヤクルトの村上だ。

 村上は2021年に打率.278、39本塁打を放ち、2022年には打率.318、56本塁打で三冠王になってヤクルトに2年連続リーグ優勝を呼び込んだ。だが、2023年は打率.256、31本塁打と急降下してチームも5位に転落。2024年も33本塁打、86打点の二冠を手にしたが、打率は.244でチームも2年連続の5位に沈んだ。

 岡本は打率.280というリーグ打撃成績10位でレギュラーシーズンの幕を閉じた。27本塁打、83打点ともに二冠の村上(ヤクルト)に及ばなかった。

 たしかに決勝打21、殊勲打(先制・同点・逆転など勝利に貢献したヒット)32、殊勲本塁打(同本塁打)17の「殊勲三冠」はリーグトップで勝負強さを見せつけたが、打率・打点・本塁打のタイトルはなかった。

 巨人の主砲としてノータイトルは寂しかったが、阿部新監督の一番の誤算は坂本勇人だろう。

 坂本は原監督最後の2023年は116試合に出場し、リーグ7位の打率.288、22本塁打でクリーンナップの一角を守ったが、ケガや体調不良で欠場が多く、打席数455は規定打席スレスレ。不動だったショートのポジションも、リーグ終盤に天才的な守備で頭角を現した新人の門脇誠に奪われ、プロ17年目で初めてとなる三塁でシーズンを終えた。

内野で一番難しいのは一塁
歴代最高の一塁手は王貞治

 この年の坂本は、6月の試合で右足の肉離れのために戦列を離れ、1ヵ月後には一軍に復帰したものの、9月には体調不良のため一軍の登録を抹消された。このときは3試合休んだだけで復帰したが、14年ぶりに打順7番を経験した。