
三つ目が、どんな要望にも粘り強く取り組み依頼者の期待に応えること。特に科学番組などで使う実験装置は、本番で作動しないと番組が成り立たないため、難解かつ緊張が強いられる案件だ。
「大がかりな装置は、専門家に相談しながら1年間ほどかけて作ることもあります」(田染氏)。苦労して作った装置も、使うのは番組内だけ。その一瞬に全力を傾ける熱意も、同工房なら「どんな難題も解決してくれるはず」という信頼感につながっている。
ものづくりの楽しさを
若い世代に継承していく
今後の展望は、「依頼してよかったと言っていただける仕事を続けていきたい」と田染氏。長男の颯野氏も3DCG担当として製作に携わっており、「3DプリンターやCNC切削などの先端技術と手しごとの技の融合も進めていきたいですね」(福島氏)。
ものづくりの魅力を伝えるべく、福島氏は、地域の子どもの舞台やカブスカウトの創作活動支援も手がけている。
「物語の中では本物より本物らしいニセモノ」の実現をうたう同工房。番組の細部を彩るどんな驚きの小道具が今後、生み出されるのか、楽しみにしたい。
(「しんきん経営情報」2025年3月号掲載 協力/西武信用金庫)