悪臭物を袋に入れて口を結べば、数日間放置しても、ほぼ臭い漏れなし。そんな高度な防臭機能で使用済みおむつやペットのふんの廃棄、非常用トイレ対策としても注目を集める「臭わない袋BOS」。複合フィルムメーカーのクリロン化成が生み出した、従来の消臭剤入り袋などの追随を許さない防臭力が売りだ。(取材・文/大沢玲子)
同社は1960年、塩化ビニールフィルムメーカーとして創業。90年代に入り、メーカーとして付加価値の高い加工技術を追究し、機能性多層フィルム専業メーカーへの脱皮を図る。
「この時期を会社の『第二の創業期』と称し、自社で設計した設備を整備し、97年からは、『5層共押出し』専業メーカーとして、多彩な製品の開発に取り組むこととなりました」
91~2023年まで同社社長、現在、会長を務める栗原清一氏はそう語る。
5層共押出し専業に転じ
多彩なフィルム製品開発
共押出し法とは複数の押出し機から異なる種類のプラスチック(樹脂)を押し出し、それらを一つの生成器に投入し、重ね合わせる加工技術を指す。複数の樹脂フィルムを貼り合わせるラミネート法と比べ、「原料から作るため、ユーザーのニーズに合わせ、小ロットのオーダーに対応できるのが強みです」と栗原氏。
同社では5種類の樹脂を重ね合わせる独自の5層共押出しをはじめとする加工技術により、柔軟性・透明性・光沢感に優れた高機能なフィルムを実現。食品を中心に医療品、工業製品などの最適な包装用フィルムを提供している。
ラミネート品に比べて、エネルギー消費量や炭酸ガス排出量を大幅に削減でき、薄肉高強度のため使用するプラスチック量を削減できるのもポイントだ。
長くBtoB市場で事業を展開してきた同社が、初めて一般消費者に向け、冒頭に掲げた「BOS」を発売したのは12年のこと。
「医療向けに便を収容する袋を開発してきた技術を生かし、他の分野への展開を模索する中、子育て中の社員から赤ちゃんのおむつやペットのふんの処理に活用できないかという声が上がったのが契機となりました」(栗原氏)
社員自らが使用することで、包装デザインやキャラクターの設定など、自発的なマーケティング活動を展開。サンプル配布などによる口コミで子育て世代やペット好きに広まっていった。高齢化社会にあって、介護施設からのニーズも高い。
自然災害の多発を受け、BOSと凝固剤、便器カバーなどをセットにした「非常用臭わないトイレセット」も発売。行政機関からも引き合いが寄せられている。