灘と開成にダブル合格でも渋渋進学…2025年中学受験で変わった東京・神奈川の勢力図進学塾VAMOS代表の富永雄輔さん Photo by Masato Kato

10年、20年先の社会の変化を見据えて、子どもの教育を考え始める親が増えている。幼児から高校生まで教える人気学習塾「VAMOS」の富永雄輔代表が、教育の新潮流から、子供の学力の伸ばしかたのヒントなどを解説する。連載第13回の今回は「2025年の中学入試の振り返り」第2弾。今回は東京と神奈川の入試を解説する。(進学塾VAMOS代表 富永雄輔、構成/ライター 奥田由意)

>>「2025年の中学入試の振り返り」第1弾はこちら

御三家を蹴って「渋渋」進学は
もはや珍しくない

 東京、神奈川の2025年の中学受験状況を振り返ると、御三家をしのぐ勢いの超難関校が安定した人気を見せつけているのが今年も特徴的でした。しかし、それは御三家の人気低下を意味せず、それぞれの学校がそれぞれに支持されているという、ある意味で健全な競争環境になっていることを示すものでもあります。

 そして、こうしたさまざまな学校がひしめき合って、僅差で競い合っているのは、難関校に限らず、中堅校や、首都圏模試偏差値40台の学校など、すべての偏差値レベルで見られる状況です。今回はその内実を詳しくひもといていきたいと思います。

 今年の中学入試。ある男子生徒が、開成と兵庫県の灘、渋谷教育学園附属渋谷(渋渋)の3校に合格しました。その生徒は、最終的に渋渋に入学することにしたのですが、その一番大きな理由は「家から通いやすいから」というものでした。また別の女子生徒は桜蔭と渋渋に合格し、やはり渋渋を選びました。

 2025年の中学受験は、伝統校と新興校に対する人気のバランスが変化している様子が顕著に表れた年となりました。いわゆる御三家以外の超難関校の人気はいまや揺るぎないものになっています。その象徴的な例が、冒頭のように、開成や桜蔭などの御三家に合格しながら、渋渋など他の超難関校を選択するケースです。こうした選択の背景には、「御三家」というブランドだけに囚われず、学校の教育内容のほか、通いやすさ(学校までの距離)や始業時間なども含めた現実的な要素が重視されるようになってきたということがあります。