その反省もなしに部活動を地域に移行しても、結局は家庭や自治体が「自己責任」で賄うことになり、家庭間・自治体間の経済格差がスポーツや芸術にも反映されるだけだろう。

 忙し過ぎる教職員の負担を軽減するために、学校が主体となって行っていた部活動を地域に「移行」する…。これだけ聞けば、大半の人が納得するのではないかと思う。しかし、今、政府が進めようとしているのは、単なる部活動の「民営化」に過ぎない。

家庭間や自治体間で生じる格差
支援をする覚悟が政府にはあるか

 経産省の描く「地域スポーツクラブを軸にした新しい社会システム像」では、今後、スポーツをビジネスとして行っている企業が、採算の取れる形で部活動を担っていく。そこには学校法人も部活動をやりたい教職員も(兼業規制を緩和して)参画できるが、保護者の費用負担が発生することは文科省も明言している。

図表:地域スポーツクラブを軸にとた新しい社会システム像に向けた提言同書より転載 拡大画像表示

 つまり、これまで無償で行われていた部活動に謝金が必要となるわけで、他の「習い事」と変わりなくなるのだ。「携帯に払うようにスポーツにもお金を払うと頭を切り替える必要」があるとの声まで聞こえてくる。

 政府は、家庭間や自治体間の格差が生じないような配慮が必要であり、地方自治体は保護者負担を抑えるために適切な減免措置などを行うこととし、政府としてもそれに対する支援をすると言う。

 しかし、これまで貧困世帯への部費などの十分な支援を怠り、専門の指導者も揃えずに学校間格差を放置してきた政府の言葉はあまりにも軽い。