中学受験のストレスの矛先を、クラスメートや教師に向ける子どもたちが増えているという。マウント合戦、いじめ、教師への暴言、学級崩壊……暴走する児童の言動に疲弊し、追い詰められ、心身を病んでしまう教員も少なくないようだ。その衝撃の実態をレポートする。本稿は、小林美希『ルポ 学校がつまらない――公立小学校の崩壊』(岩波書店)の一部を抜粋・編集したものです。
中学受験のストレスで
荒れまくる小学生
中学受験について、公教育の現場はどう捉えているのか。
ある公立小学校の校長は「学校から早く帰宅させてほしい、宿題は出さないでほしい、もっと難しい勉強を教えてほしいという要望があります。そうはいっても、学校には学校のカリキュラムがある。児童が受験のストレスで荒れてしまう『高学年プロブレム』が起こっています」と頭を悩ます。
高学年を担任するある教員も「6年生の秋頃からは、受験する子ども同士のトラブルも増えてきます。ストレスからか、授業を妨害する児童もいるので学級運営がやりにくい」と本音を漏らす。
受験生の多い地域に赴任する教員のなかには、保護者から「成績が下の子に合わせないで勉強を難しくして」「学校で宿題を出さないで」と注文がくることで、うつになっていくケースもあるという。ただでさえ教員の労働は過酷ななか、学校が荒れることで負担が増す悪循環となっている現場もある。
そこには少なからず、中学受験のストレスがある。家で素直に勉強をして塾に通っている子どもの場合でも、学校では違う顔を見せていることに親は気づいてはいない――。
「学校で問題を起こした児童の保護者に連絡をとって伝えても信じません。子どもは家では違う顔を見せているため、親は全く想像もできないのです」
都内の公立小学校で学習支援員として働く服部百合さん(仮名、50代)は、発達障がいのある児童をサポートしている。百合さんら支援員は授業中に教室にいて、支援を要する子どもたちが授業を理解しやすいようにアドバイスしていくが、「支援員になってから10年。ここ数年の子どもたちの変化は大きく、学習支援どころではない毎日を送っています」と肩を落とす。
塾の成績でマウント
いじめの原因にも
中学受験する児童が約半数という地域のため、難関校を目指すので有名な大手塾に通う児童が多かった。その塾では、毎月テストが行われて成績順でクラスが決められる。児童の多くが平日も22時まで塾で勉強している。