適切な保管場所とは?

無知 2カ所なら、タンスと仏壇、別々に保管しておくとか?

前田 そう考える人が多いのですが、火事などのリスクがあるので、少なくとも1通は耐火金庫で保管してください。そして、相続人が金庫を開けられるよう、暗証番号や鍵を引き継げるようにしておくべきです。

国税 ある程度の資産家になると、銀行の貸金庫を利用している人が多いですよね。

前田 それは注意が必要です。貸金庫を開けるのに相続人全員の同意と書類が必要になるので、手間がかかるのです。遺言書で指定すれば、その人が貸金庫を開けられますが、肝心の遺言書が貸金庫の中では……。

保管場所の選び方と相続人への通知

国税 保管場所は慎重に決めないといけませんね。あと、遺言書をどこに保管しているかは、生前に相続人に知らせておいたほうがいいですか?

無知 知らせる人を間違えると、捨てられたり、書き換えられたりしませんか?

前田 そこでおすすめなのが、令和2(2020)年にはじまった「自筆証書遺言書保管制度」です。これは、法務局に申請して遺言書保管所に預かってもらうというもので、相続が起きたら相続人に通知してもらうこともできる便利な制度です。

国税 保管制度のことは知っていましたが、通知のことは初耳です。

自筆証書遺言書保管制度のメリット

前田 自筆証書遺言の保管制度は、単に遺言書を保管してくれるだけでなく、さまざまなメリットがあります。まずは、自筆証書遺言が法的に有効な形式になっているかをチェックしてもらえることが第一のメリットです。

無知 僕のようなド素人だと、役所の人にチェックしてもらえるのは安心です。

前田 ただし、あくまで形式やルールのチェックにしかすぎず、内容が正しいかや、その遺言で相続後の登記手続きができるかなどのチェックまではしてもらえません。細かい点までチェックしてもらうなら、弁護士などにサポートしてもらったほうがいいですね。

保管制度の費用と期間

無知 わかりました。ちなみに保管制度を使うとき、お金はかかるのですか?

前田 手数料は、遺言書1通につき3900円かかります。保管期間をこちらから設定することはできませんが、原本なら遺言者が亡くなってから50年間、画像データは150年間となっているので、十分だと思います。

無知 十分すぎますね。自宅で遺言書をなくす心配もないですし、かなり便利そうです。

遺言書はどこに保管しておけばいい? … 同じものを2つ作成しておく

POINT「自筆証書遺言書保管制度」はいろんな利用メリットがある

※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。