◆常識に囚われてはいけない…江戸川乱歩の猟奇的ミステリーが暴く、ビジネス衰退のNG習慣とは?
眠れなくなるほど面白い文豪42人の生き様。芥川龍之介、夏目漱石、太宰治、川端康成、三島由紀夫、与謝野晶子……誰もが知る文豪だけど、その作品を教科書以外で読んだことがある人は、少ないかもしれない。そんな人に向けて、文芸評論に人生を捧げてきた「文豪」のスペシャリストが贈る、文芸作品が一気に身近になる書『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)。ヘンで、エロくて、ダメだから、奥深い“やたら刺激的な文豪たちの知られざる生き様”を大公開!
イラスト:塩井浩平
29歳でデビュー
芽が出たのは40歳ごろの遅咲き作家
「椅子のなかで人が暮らす」というトリッキーな設定
「明智小五郎」シリーズの5作目『屋根裏の散歩者』では、「屋根裏がある家屋」の構造が謎解きに活かされています。また、江戸川乱歩の代表作の1つである短編小説『人間椅子』は、ある女性作家が、椅子職人の不気味な手紙を受けとるところから物語が始まります。
「こんなことを申上げますと、奥様は、さぞかしびっくりなさる事で御座いましょうが、私は今、あなたの前に、私の犯して来ました、世にも不思議な罪悪を、告白しようとしているのでございます」
『人間椅子』(『江戸川乱歩傑作選』新潮文庫に収録)
【解説】視点の転換がもたらすビジネスの突破口
乱歩の作品群が放つ特異な魅力は、単なる猟奇的なミステリーの枠に留まりません。実は、これらのトリッキーな設定には、現代のビジネスパーソンにとって重要な「視点の転換」という学びが隠されています。
例えば、『屋根裏の散歩者』における「天井裏から人々の生活を見下ろす」というアプローチ。これはビジネス戦略において、既存の市場や組織の構造を一段高い場所から俯瞰し、競合他社が見落としている「死角(ブルーオーシャン)」を発見する思考プロセスに通じます。
当たり前とされているルールの外に出ることで、これまで気付けなかった新たな課題や顧客ニーズが見えてくるのです。
究極の顧客体験(UX)への没入
一方、『人間椅子』における椅子職人の異常なまでの執念はどうでしょうか。椅子の中に自らが入り込み、座る人の温もりや息遣いまでを直に感じ取ろうとする狂気的な設定。これを現代のプロダクト開発やマーケティングに置き換えると、「究極の顧客視点」や「ペルソナへの徹底的な共感」と言い換えることができます。
ユーザー自身すら気付いていない潜在的な欲望(インサイト)を捉えるためには、作り手が自らのプロダクトやサービスに深く没入し、顧客の体験と完全に一体化するほどの情熱が求められます。乱歩の描いた「非日常のアイデア」は、私たちの凝り固まった常識を打ち破る強力な思考ツールです。
日々の業務で行き詰まりを感じたときこそ、屋根裏を見上げ、椅子の中に潜むような「異端の視点」を持つことが、次なるイノベーションを生み出す鍵となるはずです。
※本稿は、『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。







