トランプ氏の標的「負け組」株、なぜ「勝ち組」にPhoto:Spencer Platt/gettyimages

 2025年の「トランプ・トレード」とはドナルド・トランプ米大統領が標的とする領域の株式を買うこと、つまり「反トランプ・トレード」だとすれば、皮肉なことではないだろうか。今年はカナダ、コロンビア、メキシコ、欧州、中国のテクノロジー株のパフォーマンスはいずれもS&P500種指数を上回り、ドルは下落し、巨大テック銘柄で構成する「マグニフィセント・セブン」――そのうち5社のトップは大統領就任式でトランプ氏の後ろに立っていた――は米株式市場のけん引役から出遅れ組に転じている。

「反トランプ・トレード」のように見えるものは、市場の大規模なローテーションというのが実態だ。この動きを後押ししているのは相互に無関係な一連の出来事、つまりウクライナを巡る和平の見通し、ドイツの景気刺激策に対する期待、中国のビジネス重視への転換、安価な人工知能(AI)、米経済の減速などだ。

 だが、よくあるローテーションが起きているわけではない。市場のローテーションでは通常、「勝ち組」が「負け組」に転じ(またはその逆)、それぞれは企業規模や株価の割高感などで明確に区別される。現在、大型株は引き続き小型株よりも好調で、株価収益率(PER)が高い割高株は割安株とほぼ同様のパフォーマンスを示している。その一方で、米国の超大型株は苦戦している。

 まず、トランプ氏が完全にマイナス材料になっている取引を見てみよう。電気自動車(EV)大手テスラは昨年の米大統領選後に急騰した。トランプ氏の盟友という新たな役割をイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が演じることで、テスラは恩恵を受けると投資家は――私の見方では誤って――予想したためだ。テスラ株は12月半ばにピークを付けて以降、急落している。気候変動への関心が高いテスラの顧客層がマスク氏の右傾化を歓迎していないのは明らかだろう。ただ、テスラの株価はまだ大統領選当日の水準を上回っている。