プレゼン資料は、「読ませるもの」ではありません。“込み入った話”を言葉だけで伝えようとすると、どうしてもまどろっこしい表現になり、非常にわかりにくい説明になりがちです。そんな時に必要なのは、伝えるべき内容の「本質」を、直観的に理解できるように「図解化」する技術。プレゼン資料は「見せるもの」なのです。そこで、累計40万部を突破した『社内プレゼンの資料作成術』シリーズの著者で、ソフトバンク在籍時には孫正義社長に直接プレゼンをして「一発OK」を次々と勝ち取った実績を持つ前田鎌利さんと堀口友恵さんに、プレゼン資料を「図解化」する技術を伝授していただきます(本連載は『プレゼン資料の図解化大全』から抜粋・編集してお届けします)。

【褒められるプレゼン】“込み入った内容”を最速で伝える「図解」のコツ写真はイメージです Photo: Adobe Stock

全体の中での「位置づけ」を明示する

 ビジネス・プレゼンで、よく使う図解に「ツリー型」があります。

 これは、ある事柄を分解していくことによって、その階層や構造などを表現するのに適した図解です。ビジネス・プレゼンにおいては、これから説明する内容が、テーマ全体の中でどういう位置付けにあるのかを示す「ブリッジ・スライド」として使用されるケースが多いように思います。

 例えば、【図10-1】をご覧ください。私たちは、企業などで「プレゼンテーション研修」を行うことが多いのですが、そのときに、このようなスライドをお見せすることがあります。

【褒められるプレゼン】“込み入った内容”を最速で伝える「図解」のコツ

 このスライドを示しながら、「ご覧の通り、プレゼンにはさまざまな種類がありますが、本日は『営業プレゼン』のノウハウについてお伝えします」などと言いながら、「営業プレゼン」のボックスをアニメーションで赤い太線で囲ったりすれば、聴衆のみなさんは、その日の研修の目的をはっきりと認識することができるでしょう。

ロジックツリーで「問題の原因」を分解・特定する

 あるいは、問題や課題を生み出している「原因」を特定するために、ロジックツリーを示すのも効果的です。

 例えば、経営陣から「店舗の売上減少の改善策を提案するように」との指示があったとしましょう。そして、さまざまな角度から原因究明をした結果、【図10-2】のような改善策を立案したとしましょう。

【褒められるプレゼン】“込み入った内容”を最速で伝える「図解」のコツ

 お気づきのように、下線部の説明がたいへんまどろっこしいため、この部分をロジックツリーに落とし込んだスライドを用意するとわかりやすいプレゼンになりそうです。

 そこで、【図10-3】でこの部分のスライドを実際につくってみましたので、一緒に見てまいりましょう。

【褒められるプレゼン】“込み入った内容”を最速で伝える「図解」のコツ

 第1のポイントは、①のようなロジックツリーを見せることで、決裁者(経営陣)に、「売上減という問題について、網羅的に検証している」という安心感・納得感を与えることができることです。

 第2のポイントは、①④⑥が「ブリッジ・スライド」としての機能を果たすことで、プレゼンの流れが把握しやすくしていることです。

 まず、①のスライドでは「顧客数減少」のボックスの枠を強調、④では「客単価減少」のボックスを強調することで、「これから何を説明しようとしているのか?」を俯瞰的に理解できるようになっています。

 そして、⑥のスライドで、「売上減」の最大の原因である「1回あたりの購入額減少」のボックスを強調することで、「原因の特定」を視覚的に伝えているわけです。このことをしっかりと決裁者にインプットすることができれば、このあと提案する「顧客アンケート調査」についても納得感を持って受け止めてもらえるに違いありません。

 このように、「ツリー型」のスライドを上手に活用することによって、わかりやすくて説得力のあるプレゼンをすることができるようになります。きっと、周囲からも「わかりやすい!」と褒められるはずですので、ぜひ、マスターしてください。

(本稿は、『プレゼン資料の図解化大全』より一部を抜粋・編集したものです)

前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年生まれ。ソフトバンクモバイルなどで17年にわたり移動体通信事業に従事。ソフトバンクアカデミア第一期生に選考され、プレゼンテーションにおいて第一位を獲得する。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも数多く担当。2013年12月にソフトバンクを退社、株式会社固を設立して、プレゼンテーションクリエイターとして独立。2000社を超える企業で、プレゼンテーション研修やコンサルティングを実施。ビジネス・プレゼンの第一人者として活躍中。著書に『【完全版】社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』(すべてダイヤモンド社)など。

堀口友恵(ほりぐち・ともえ)
埼玉県秩父市生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、ソフトバンクへ入社。技術企画、営業推進、新規事業展開などを担当する中で、プレゼンの経験と実績を積む。2017年に株式会社固へ転職し、スライドデザイナーとしての活動を始める。企業向け研修・ワークショップの担当や大学非常勤講師のほか、大手企業などのプレゼンのスライドデザインを担当し、のべ400件以上の資料作成やブラッシュアップを手がける。前田鎌利著の『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』のコンテンツやスライドの制作にも深く関わった。ITエンジニア本大賞2020プレゼン大会にて、ビジネス書部門大賞・審査員特別賞を受賞。小学生向けのオンライン講座「こどもプレゼン教室」を運営し、子どもたちのプレゼンスキルアップの支援も行っている。