私は社長や会長の役目を務めてきましたが、いきなり山の中に置き去りにされたら、全く使いモノになりません。一方で経営には不向きでも、木の切れ端から役に立つ道具を作ったり、食べ物を探してきたりする能力を備えた人もいるわけです。

 仕事に適性を発揮できない社員を出世させることはないでしょうが、あえて貶める必要はありません。差がついてくるのは自然だし、成果を上げた人が評価されるのは当たり前ですが、信賞必罰だけだと上手くいかないものです。

 入社時から飛びぬけて優秀な人もいますが、採用後に「とんでもない人を雇ってしまったな」と思った経験もあります。あるけれども、どうしようもありません。組織には「2・6・2の法則」があると言われます。優秀な人が2割、普通の人が6割、優秀でない人が2割で構成されるという考え方です。優秀な社員だけ集めたつもりなのに、2割はダメになってくるわけでしょう。その人たちは、その人たちに合った仕事に回していけばいいだけのことです。

 組織にはいろいろな人間がいて、能力を発揮する場面も異なります。だから少しぐらい緩くていいんじゃないか、と思っているわけです。

 ですから、絶対に採用してはいけない人とか、会社に悪影響を与えてしまうタイプなんていうのはありません。あくまで、他人に対する尊敬は必要なのです。

 一方、若手のころから優秀だったのに、40代くらいで頭打ちになる、やる気を失くしてしまう人たちがいます、そんな人が「責任あるポジションがもらえないから仕事ができない」なんて思っているとすれば、責任あるポジションに就けたって、満足な仕事は出来やしません。

 私は大学を卒業して、西宮酒造(現在は日本盛)に入社しました。新入社員時代に、当時の部長から言われた言葉をよく覚えています。

「人間は、村祭りのときに舞台がなくて、その辺の野っぱらで舞を舞えと言われても、舞わなくちゃいけない。『舞台がないから舞えません』なんて言ってたら、舞台があったって舞えやしないよ」

 まさにそう思います。ですから社員たちに、「自分が納得できるような環境や条件は、絶対に望めないものだ」と言い聞かせています。舞台が整うまで待とうとしていたらダメだし、どんな場所であろうと、たとえ下手であろうとも、舞わなければいけないものなのです。

「こいつ、ダメだな…」資料を見れば一瞬でバレる絶対に仕事ができない人の特徴Photo by Shogo Murakami