「そんな甘っちょろい考えで、儲けられるとでも?」今、株式投資界で注目の一冊──YouTubeで人気を集める栫井駿介氏の最新刊『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』がついに発売となった。発売開始後すぐに増刷が決まるなど、個人投資家の間で話題だ。
この物語に登場するのが、個人投資家たちがひそかに通うひばり投資診療所の冷酷な女医・忌部あかり。彼女の診療は、単なるアドバイスではなく、投資家として生まれ変わるための“荒療治”だ。作中でエリート商社マン・波野衿人を叩き直した忌部あかりが、今度はあなたの投資相談に乗る。
「買った株が下がって焦っている」「利益が出たのに、どこで売ればいいか分からない」「決算が良いのに、なぜか株価が暴落……」そんなあなたの迷いに、忌部あかりが診断を下す。優しくなんてしない。でも、あなたを勝てる投資家へと導くために。さあ、診察室へどうぞ──覚悟はできている?(構成/栫井駿介、ダイヤモンド社書籍編集局)

三菱商事(8058)の株、持ったままでいいでしょうか?
【相談内容】
昨年2月に三菱商事の株を3000円付近で買いました。その頃は株価がぐんぐん伸びていて、一時期は3600円を超えるところまで行きました。
しかし昨年の後半から、株価がじわじわ下がりはじめ、すぐに戻るかなと思っていたのですが、2500円付近まで落ちてしまいました。買った時点から15%以上マイナスになっています。このまま持ち続けていいのでしょうか?

株価は将来に対する期待と不安で動く
── バフェットが数年前から日本の商社を買っているという話をSNSで目にしたので、間違いないと思って買ったのですが、下がってきていて、持ち続けて大丈夫でしょうか?
忌部あかり(以下、忌部):バフェットが買ってるから? ……で、あなた自身で業績を見たの?
── えっ、見てません。
忌部:株価しか見てないやつほど、不安になってギャーギャー騒ぐものね。
21年3月期から、過去最高益の23年3月期にかけて三菱商事の純利益は大きく伸びてるわ。24年3月期も23年3月期に次いで高い水準だった。
理由? コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻、インフレも相まって、その期間に資源価格が上がったからよ。三菱商事は、資源関連のビジネスが利益の大部分を占めているからね。
── やっぱり、バフェットが買ってるくらいだから業績はいいんじゃないですか!
忌部:あんた何もわかってないのね。株価っていうのは、過去の業績じゃなくて、これからの期待で動いていくものよ。資源価格が下がってきてるんだから、そりゃ株価も下がるわけ。
特に、資源ビジネスの主力の1つでもある石炭の市況が悪くなってきてるわ。
そんなことも調べずに投資してるなら、目をつむって投資してるようなもんよ。過去数年間と同じように今後も急激に成長していくとでも思ってるの?
実際に三菱商事が発表している今期業績予想は、前期に続いて減益になってるでしょ?
── えっ、そうなんですか?
忌部:決算も見てないくせに、減益って聞いて条件反射でビビってるの? 呆れるわね。あんた、株を買う前に決算くらい確認しないの?
── いや、バフェットが買ってるから……。
忌部:バフェット、バフェットって、あんたバフェットと同じ視点で投資してるつもりなの?
バフェットが日本の商社株を大量に保有していることがわかったのは2020年。つまりその前から買っていたのよ。
バフェットは長期投資を前提に、割安なタイミングを狙う投資家よ。
あんたみたいに「大物投資家が買った! 株価が上がってる! だから私も!」って、何も考えずに高値で飛びつくのとは違うの。バフェット以外にあんた自身の判断基準はないの?
── ……。
忌部:だから目先の値動きで右往左往するのよ。投資は自分の判断軸がないと、相場に振り回されるだけ。
── じゃあ、どうすれば?
忌部:何も考えずに買ってあたふたしてるくらいなら、一度売って冷静になりなさい。
株を買うときは、自分がなぜその株を買うのか考えなさい。「誰かが買ってるから」なんてのは論外よ。
投資家は短期のアップダウンだけじゃなくて、その先を見据えるべき。未来のことなんて誰にもわからない。だからこそ、自分で判断しなきゃいけないのよ。
※本記事は、『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』(栫井駿介・著)の登場人物・忌部あかりをもとにしたフィクションです。