
「天気」を軸に日本の「歴史」を振り返ることで、歴史を気軽に学びながら自然や環境への興味も掻き立てるように構成された書籍『空を見上げて歴史の話をしよう』。この中から今回は、世界各地の火山噴火が地球に及ぼした影響や、「島原の乱」「寛永の大飢饉」のバックグラウンドを解説します。

世界各地の火山噴火が
引き起こした「寛永の大飢饉」
ミナカタ 家康が1603年に江戸で幕府を開いて以降、ようやく日本に太平の世が訪れたように思えた。一方で世界を見てみると、1630年代から各地で火山噴火が頻発していた。そしてそれが平和に生活していた日本の人々に影を落とすことになる。
火山が噴火すると、地球の気温はどうなると思う?
メグル やっぱり高くなるんじゃないかな。
ミナカタ 実はその逆なんだ。たしかに火山の周辺はとても高くなる。でも、火山から出る、火山灰や霧状の「エアロゾル」が、太陽光を遮ってしまい、結果的に地球の気温は低下してしまう。
ワタル エアロゾル? 初めて聞いた。何なのそれ?
空気の中に浮遊している、塵ちりなどの微粒子の総称だ。特に、火山ガスに含まれる「硫酸エアロゾル」(※)が集まると、霧のようになって、地球を覆ってしまう。すると太陽光が地球に入りづらくなり、地球は冷えていってしまうんだ。「火山の冬」と呼ばれる現象だ。
※二酸化硫黄などの化学物質が化学変化を起こして硫酸となり、それが水分を取り込むことでできる
ワタル 火山が噴火すると地球が冷えてしまうなんて、意外だなあ。
ミナカタ 火山噴火が頻発したため、1630年代から1640年代にかけて、世界各地で異常気象が発生するようになる。冬がより厳しい寒さになったり、干ばつ、つまり、雨が長らく降らずに水が乾いてしまったりして、農作物の生産が困難となり、食糧難に陥る国や地域が続出した。
そして、その影響はもちろん日本も例外ではない。1640年に江戸初期における最大の飢饉、「寛永(かんえい)の大飢饉」が起こるんだ。
ワタル え、何か怖いんだけど……。
ミナカタ その兆候として、肥前国の島原(※)で、ある事件が起こった。
※現在の長崎県島原市。半島になっている