「グランクラス」の設定を見送った
東北新幹線の新型車両「E10系」

 もうひとつは東北新幹線の新型車両「E10系」だ。東北新幹線をめぐっては6日、走行中の東北・北海道新幹線「はやぶさ」と秋田新幹線「こまち」が走行中に分離するトラブルが発生した。

 昨年9月に引き続き半年で2度の列車分離を重く見た国の運輸安全委員会は「重大インシデント」に認定し、JR東日本は14日まで連結運転を中止する事態となった。ただこれも連結器を機械的に固定するという応急策で、原因究明には至っていない。

 この件については、もう少し背景が明らかになってから改めて記事化する予定なので、とりあえず脇に置いて話を進めることをご了承いただきたい。

 さて、今回発表された「E10系」は、現在の主力「E2系」「E5系」の後継車両で、2027年秋以降に完成予定の第1編成で走行試験を実施。2030年度の営業運転開始を目指している。

 大きな変化は、E5系導入とともにサービスを開始した最上級座席「グランクラス」の設定が見送られたことだ。かわって普通車指定席1両をパソコン作業、ウェブ会議、通話が可能な車両とする「TRAIN DESK」を発展させ、シート配列や座席形状、テーブルを最適化した専用車両とする。

「グランクラス」は利用状況が振るわないのが実情で、一方でビジネス需要が高まっていることから方向転換を模索しているのかもしれない。ただし、これは半分試作車両となる第1編成の構成であり、量産までに方針を決定するとしている。

 2030年度といえば北海道新幹線の当初の開業予定であり、E10系は本来であればあわせて実施される時速360キロ運転に対応した車両にしたかったはずだ。だが、工事の遅れで開業は2038年度まで延びる見込みとなったことで、とりいそぎE2系とE5系の初期車両を置き換える役割にとどまった。

 とはいえ最新の地震対策や自動運転実現に向けた準備工事などを織り込んだ意欲的な車両であり、決して「中継ぎ」ではない。JR東日本は「今後予定されている札幌開業に伴い運用する車両については、今回設計する車両をベースに別途検討」するとしており、長距離利用の需要が見込めるグランクラスは北海道新幹線直通専用車両に絞られるのかもしれない。

 新型ではないが「新車両」といえば4日に発表された「新幹線荷物専用車両」の導入だ。JR東日本に限らずコロナ以降、鉄道ネットワークを活用した荷物輸送サービスが拡大しており、先述のE10系も荷物輸送用ドアを設置し、荷物の積み下ろしをよりスムーズにする計画だ。

 一般の営業列車を使用した荷物輸送は、少量多頻度の輸送が強みだが、大口輸送には対応できない。そこで山形新幹線で使われていた「E3系」車両1編成(7両)の座席を撤去し、床面フラット化した輸送専用車両に改造し、100箱単位、最大で1000箱程度の大口輸送を行う。車両は盛岡発着のE5系「やまびこ」と連結し、盛岡新幹線車両センター(車両基地)と東京新幹線車両センターで積み下ろしを行うという。