開業から120周年を迎える阪神電気鉄道開業から120周年を迎える阪神電気鉄道 Photo:PIXTA

阪神電気鉄道は今年、1905年4月12日の開業から120周年を迎える。前年、1904年に甲武鉄道(現・JR中央線)が電車運行を開始しているが、こちらは蒸気機関車で運行していた「鉄道」を電化したもの。阪神が画期的だったのは「軌道」として開業したことだ。関西私鉄の雄である阪神電気鉄道の120年の歴史とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

路面電車としての
特許だった摂津電気鉄道

 軌道とは法令上、道路上に敷設した線路(併用軌道)を走行する、道路交通の補助的交通機関、つまり路面電車のことを指す。ところが阪神は大阪、神戸市内など一部の区間を除き、鉄道専用の線路(専用軌道)を走行する事実上の鉄道だった。

 大阪~神戸間の鉄道輸送は1874年に開業した官設鉄道(現・東海道本線)が担っていたが、需要が大きい区間だけに民間資本も参入を狙い、1890年代に入って大阪方に「坂神電気鉄道」、神戸方に「摂津電気鉄道」という計画が持ち上がった。

 ただし、両社の計画は性格が異なっていた。摂津電気鉄道は主に道路上を平均時速24キロ程度で走行する軌道として、1893年に特許出願した。一方、1895年に鉄道として出願した坂神電気鉄道は、専用軌道、大型車両を用いる鉄道として、阪神間を現在の阪神電鉄特急列車並みの30分、10分間隔で結び、速度においても運賃においても官設鉄道を上回ろうという意欲的な計画だった。

 両グループは1896年に合同し、1899年に阪神電気鉄道に改称した。摂津電気鉄道が出願した神戸~尼崎間は1897年、尼崎~大阪間は1898年に軌道特許が下りたが、最高速度時速13キロ、1両での運行という条件が付されており、路面電車としての特許であった。