JR・私鉄各路線で広がるワンマン運転
南武線の対応には一部懸念も

 一般列車を活用した荷物輸送サービスも拡大する。今年4月18日以降、「はやぶさ」臨時列車の1~2号車を荷物用、3~10号車を旅客用とし、最大200箱を輸送する本格的な貨客混載輸送を開始する。今後は秋田・山形・上越新幹線にも拡大したいとしている。

 JR東日本は2024年2月に日本郵政グループと「社会課題の解決に向けた連携強化」に関する協定を締結している。他にもサカイ引越センターやヤマト運輸、日本通運、UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)など、さまざまな物流事業者との連携を検討しているといい、物流業界にも一定の影響を与えそうだ。

 車両つながりでは、京王電鉄が井の頭線1000系に自動運転設備を搭載し、3月中旬以降、回送列車にてワンマン運転の実証実験を開始する。

 ATO(自動列車運転装置)を用いた「自動運転」は東京メトロや都営地下鉄、東急などで既に行われているが、JR東日本が3月15日のダイヤ改正で常磐線各駅停車と南武線のワンマン運転を開始したように、今後は郊外のJR・私鉄各路線にもワンマン化の波が広がりそうだ。なお前述の東武80000系も既にワンマン運転に対応した設備が用意されている。遠くない将来のワンマン化を想定しているのだろう。

 そんな中、京王の自動運転が興味深いのは、2021年10月31日に京王線特急列車内で発生した刺傷事件で、緊急停車した駅で停止位置がずれ、ドアからの避難が遅れた反省を踏まえ、乗務員のボタン操作で最寄りの通過駅を含む駅に強制的・自動的に定位置に停車させる機能を追加した点だ。

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 既にワンマン運転は広く行われており、前例を踏襲するのは容易いが、路線特有の環境・事情や過去の教訓を踏まえてシステムを設計する姿勢は評価されるべきだろう。

 その中でやや気になるのがJR南武線のワンマン化だ。南武線では既存の「E233系」車両を改造してワンマン対応するが、ドアの開閉ボタンが物理ボタンでなく、運転台の液晶画面をタッチして操作する構造なのだ。

 JR東日本の担当者に聞くと、現場の運転士も含めて操作性を確認し、問題ないと判断したというが、自動車のエアコンで流行したタッチ式ボタンが廃れたように、目視せずに行う操作は物理ボタンのほうが確実だ。ましてや乗客の安全にもかかわる問題である。

 本稿は3月15日のJR・私鉄ダイヤ改正以前に執筆したもので、実際にどうなったかは分からないが、今後もJR東日本のワンマン化は同様の手法を取り入れるだろうから、行方を注目していきたい。