プレゼン資料は、「読ませるもの」ではありません。“込み入った話”を言葉だけで伝えようとすると、どうしてもまどろっこしい表現になり、非常にわかりにくい説明になりがちです。そんな時に必要なのは、伝えるべき内容の「本質」を、直観的に理解できるように「図解化」する技術。プレゼン資料は「見せるもの」なのです。そこで、累計40万部を突破した『社内プレゼンの資料作成術』シリーズの著者で、ソフトバンク在籍時には孫正義社長に直接プレゼンをして「一発OK」を次々と勝ち取った実績を持つ前田鎌利さんと堀口友恵さんに、プレゼン資料を「図解化」する技術を伝授していただきます(本連載は『プレゼン資料の図解化大全』から抜粋・編集してお届けします)。

「そのグラフ、伝わってません!」一瞬で差がつくビジネスプレゼンのNGデザイン写真はイメージです Photo: Adobe Stock

絶対マスターすべき「3つのグラフ」

 ビジネス・プレゼンにおいて、最も重要かつ最も頻出する図解が「グラフ」でしょう。ビジネスにおける意思決定は「数字・データ」に基づいて行いますから、「数字・データ」の比較や推移、割合などを視覚的に表現する「グラフ・スライドの作成」をマスターすることは絶対に避けて通ることはできません。

 グラフにはさまざまな形態のものがありますが、私たちの経験上、「棒グラフ」「折れ線グラフ」「円グラフ」をマスターすれば、ほとんどのビジネス・プレゼンは対応可能だと思います。みなさんご存じの通りだと思いますが、念のため、それぞれの特徴を私たちなりに整理しておきましょう(図12-1)。

「そのグラフ、伝わってません!」一瞬で差がつくビジネスプレゼンのNGデザイン

①棒グラフ:棒の高さで「数字の比較」「数字の推移」を表現する

【図12-1】の①は、特定の時点における競合商品の売上数を「比較」する棒グラフです。このように、「比較」するために棒グラフを使うこともありますが、それよりも、②のように「数字の推移」(自社商品の売上推移)を表現するために棒グラフを使うケースのほうが多いと思います。

 なお、③のように「数字の推移」は折れ線グラフでも表現できますが、「面積」で数字の大小を表現できる②の棒グラフのほうが、相手に強い印象を与えることができます。そのため、私たちは特定の事柄の「数字の推移」を表現するときには、折れ線グラフではなく棒グラフを使うことをおすすめしています。

②折れ線グラフ:複数の「数字の推移」を表現する

「折れ線グラフ」が効果的なのは、【図12-1】の④のように、複数の数字の「推移」を表現するときです。④のグラフは、競合商品の売上推移を比較するものですが、このような表現は「棒グラフ」では不可能であり、「折れ線グラフ」にしかできないことです。

③円グラフ:「構成比率」を表現する

「円グラフ」は、ある事柄の「構成比率」を表現するのに適しています。【図12-2】は、自社商品の世代別購入比率を示したものですが、このように円グラフで「40代が過半数を占める」というデータを決裁者にインプットしたうえで、「40代」向けの販促策を提案すると効果的でしょう。

「そのグラフ、伝わってません!」一瞬で差がつくビジネスプレゼンのNGデザイン

 もちろん、これら3つのグラフ以外にも、「積み上げ棒グラフ」「散布図」「ヒストグラム」「レーダーチャート」などさまざまなものがありますが、それらを使う局面は比較的少ないので、まずはこれら主要な3つのグラフをマスターすることに集中したほうがいいでしょう。

直観的にわかる「グラフ」に加工する

 では、「優れたグラフ・スライド」とはどういうものでしょうか?

 ずばり、「考えさせないスライド」です。グラフを読み解くために、相手の頭にかける負担を最小化することが大切です。スライドを見た瞬間に「どの数字を見せたいのか?」がわかり、最長でも10秒以内に「何を表現しているグラフなのか?」を把握できるような、直感に訴えるスライドこそが優れているのです。

 ですから、【図12-3】のように、エクセルから立ち上げたグラフを、そのまま本編スライドに貼り付けるのはNGです(アペンディックスに入れるスライドであればOKです)。

「そのグラフ、伝わってません!」一瞬で差がつくビジネスプレゼンのNGデザイン

【図12-4】は、「棒グラフ」の例ですが、このようにできる限りシンプルなグラフに加工するとともに、伝えたい「メッセージ」を明確に打ち出すことで、直観的に理解できる図解スライドにするようにしてください(そのための具体的なテクニックを『プレゼン資料の図解化大全』でお伝えしています)。

「そのグラフ、伝わってません!」一瞬で差がつくビジネスプレゼンのNGデザイン

(本稿は、『プレゼン資料の図解化大全』より一部を抜粋・編集したものです)

前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年生まれ。ソフトバンクモバイルなどで17年にわたり移動体通信事業に従事。ソフトバンクアカデミア第一期生に選考され、プレゼンテーションにおいて第一位を獲得する。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも数多く担当。2013年12月にソフトバンクを退社、株式会社固を設立して、プレゼンテーションクリエイターとして独立。2000社を超える企業で、プレゼンテーション研修やコンサルティングを実施。ビジネス・プレゼンの第一人者として活躍中。著書に『【完全版】社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』(すべてダイヤモンド社)など。

堀口友恵(ほりぐち・ともえ)
埼玉県秩父市生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、ソフトバンクへ入社。技術企画、営業推進、新規事業展開などを担当する中で、プレゼンの経験と実績を積む。2017年に株式会社固へ転職し、スライドデザイナーとしての活動を始める。企業向け研修・ワークショップの担当や大学非常勤講師のほか、大手企業などのプレゼンのスライドデザインを担当し、のべ400件以上の資料作成やブラッシュアップを手がける。前田鎌利著の『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』のコンテンツやスライドの制作にも深く関わった。ITエンジニア本大賞2020プレゼン大会にて、ビジネス書部門大賞・審査員特別賞を受賞。小学生向けのオンライン講座「こどもプレゼン教室」を運営し、子どもたちのプレゼンスキルアップの支援も行っている。