買った株が急落……どうすればいい?──そんな瞬間に身に覚えがないだろう? 買った途端に値下がりし、パニックになって売却。ところが、その後じわじわと回復して「売らなきゃよかった」と後悔したことがある人は多いはず。逆に、損切りをためらって「そのうち戻るはず」と持ち続けた結果、含み損がどんどん膨らみ、身動きが取れなくなってしまうことも。株式投資で本当に利益を出している人は、こうした局面でどう考え、どう行動しているのだろうか? 話題の新刊『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』では、YouTubeで株式投資のアドバイスを配信し人気を博す栫井駿介氏が「利益を出せる個人投資家の思考法」をわかりやすく解説する。株価の乱高下に振り回されず、冷静に判断できる投資家になるためのヒントが満載の話題作だ。この記事では、特別に本書の一部を公開する。

投資信託というビジネスのからくり
インデックスファンド、アクティブファンド、個別株……どれを選んでも決して間違いとは言えないのですが、アクティブファンドについて言えば「それはやめておいた方がよい」という選択肢があります。
その特徴は明白なので、ぜひ「リテラシー」の第一歩として覚えておいてください。
その特徴に入る前に、まずはファンドというビジネスの仕組みを理解することが重要です。
ファンド=投資信託です。これは、運用会社が設定し、証券会社や銀行などの販売会社が販売します。
ビジネスですから、そこから手数料を獲得することで成立しています。その手数料というのが、大きく分けると「販売手数料」と「信託手数料」です。
販売手数料とは、投資信託を買った際にかかる手数料で、何回も売買するとそれだけたくさんかかってきます。
一方、信託手数料は、投資金額に年間数%という料率で投資金額から引かれています。
少し古い話ですが、証券会社では「回転売買」という販売方法が横行していました。投資信託を何度も乗り換えさせることで、販売手数料を稼ぐ手法です。
「良い投資信託がある」と話を持ち掛け、上がったら「そろそろ売り時ですよ」と次の商品を勧め、下がったら「前回のは旬が過ぎたので次に乗り換えましょう」と言って、これまた販売手数料を稼ぎます。
顧客が投資信託を売って損が出ても証券会社の懐は全く痛みません。顧客が儲かることよりも、何度も売買させた方が証券会社は儲かるのです。
買ってはいけない投資信託
手数料を稼ぐために、証券会社系列の運用会社は「売れやすい」投資信託をどんどん作ります。
特に売れやすさの特徴となるのが、その時々に流行っているテーマを冠したものです。今でいうなら「AI」や「グリーン」といったものが個人投資家に受けるテーマでしょう。
これらの商品を次々に出すことで、個人投資家の関心を引きつけます。
しかし、このような「テーマ型投信」は設定される時にはすでに株価が大きく上がり、中にはバブル的に上昇しているケースもあります。
したがって、「新たに設定された時がピーク」ということが珍しくないのです。
やがて時期が去ると、投資信託の運用自体がおろそかになり、そのまま放置されます。
このようなことが繰り返され、日本の投資信託の設定本数は米国に比べて異常に多くなってしまっているのです。
もちろん、中には長期的なテーマとなり、長く成長を続けるものもないわけではありません。しかし、多くはそうではないということを理解する必要があります。
良い投資信託の条件
良い投資信託とそうではないものを見分けるポイントとしては、今述べたような「テーマ型かどうか」ということの他に、「運用期間」や「純資産額」、そして「手数料」も見極めのポイントとなります。
運用期間が短く純資産額が小さい投資信託は、これから販売したい意図が強いものと考えた方がよいでしょう。
また、販売手数料の高いもの(例:3%以上)にも注意が必要です。
ちなみに、インデックスファンドは一般的に販売手数料はゼロ、信託手数料は0.1%程度なので、この比較からもインデックスファンドのありがたさが浮き彫りになってきます。
逆に、良いアクティブファンドの条件としては「手数料率が良心的」「運用者の顔が見える」「投資哲学が明確」などの特徴があります。
特に、独立系運用会社(証券会社に依存しない運用会社)は回転売買させる意味がないので、同じ商品を長く持ってもらうことが重要になります。
したがって、あくまで比較感で言うなら、投資家に寄り添った商品となる可能性が高いと言えます(もちろん実力はまちまちということになりますが、そこは投資家の「目利き力」が試されるところです)。
ただし、どんなに良い投資信託を選ぼうと、結局は運用者に任せることになり、自分でコントロールできる範囲には限界があります。
それではいやだ、という方はいよいよ個別株を自分で選んでみることになるのです。
自分でやる分には、ネット証券の発達と手数料競争により今では名実ともに手数料は「ゼロ」になりました。
これまでに説明した通り、ファンドの論理に付き合わされる必要はありません。
バフェットのようにインデックスファンドを大きく上回ることもできるのです。
個別株にはそれを自らの手で叶えられる夢があります。
(本記事は『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』の一部を抜粋・編集したものです)