上司のフィードバックが「警戒」「反発」される理由
そして、「上司による部下へのアドバイスは効果がない」という理由がここにあります。
アドバイスとは、上司による「監視結果」の部下へ対するフィードバックです。そこにはどうしても、距離の近い個人と個人の、お互いの「顔」が見える関係性があります。そして、そのフィードバックは通常、客観的なデータに基づくものではなく、上司の主観を色濃く反映したものとなります。
だからこそ、心理的な「疑念」「警戒」「反発」が生まれやすいのです。
しかも、その関係性は明らかな「上下関係」「優越ポジションVS劣等ポジション」から構成されていますから、「心理反応」が過剰に起きる土壌が十分にあります。だから、上司から部下に対するアドバイスは、「逆効果」に終わる可能性がきわめて高いということになるのです。
もちろん、この研究結果一つで、すべてを説明することにはなりません。
「上司のタイプ」や「部下のタイプ」など、個人の属性も結果に影響するでしょうし、企業の規模や業種、業態も影響するでしょう。あるいは、その企業で培われてきた組織文化も影響するでしょう。
しかし、監視に基づく部下へのアドバイスが、「逆効果」になり得ることは理解できるでしょう。
このように、社会学的観点からも、アドバイスに効果がないと言うことができるのです。
(この記事は、『優れたリーダーはアドバイスしない』の一部を抜粋・編集したものです)
企業研修講師、公認心理師
大学卒業後新卒でリクルート入社。商品企画、情報誌編集などに携わり、組織人事コンサルティング室課長などを務める。その後、上場前後のベンチャー企業数社で取締役、代表取締役を務めたのち、株式会社小倉広事務所を設立、現在に至る。研修講師として、自らの失敗を赤裸々に語る体験談と、心理学の知見に裏打ちされた論理的内容で人気を博し、年300回、延べ受講者年間1万人を超える講演、研修に登壇。「行列ができる」講師として依頼が絶えない。また22万部発行『アルフレッド・アドラー人生に革命が起きる100の言葉』や『すごい傾聴』(ともにダイヤモンド社)など著作49冊、累計発行部数100万部超のビジネス書著者であり、同時に公認心理師・スクールカウンセラーとしてビジネスパーソン・児童生徒・保護者などを対象に個人面接を行っている。東京公認心理師協会正会員、日本ゲシュタルト療法学会正会員。