週刊ダイヤモンド 2007年4月、ワシントン先進7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議の声明は、「世界経済はリスクは残存するものの、過去30年超で最も力強い持続的成長を経験し、より均衡のとれたかたちになっている」と高らかに謳っていた。これは、わずか15ヵ月前の話である。

 その世界経済が今、一転して危機に直面している。その危機を本誌は「新型石油危機」と呼ぶこととした。

 2000年代の世界経済、とくに新興国経済は、それ以前の時代とは比べ物にならないほど「低インフレの時代」にあった。インフレなき経済成長を実現した。

 現在、世界が直面しているインフレ危機は「その副作用」と捉えられる。成長を遂げた新興国経済、その後のサブプライム問題による金融市場の混乱、ドルの危機問題。それらが現在のグローバルインフレの背後にある。

 今回の特集の「パート1」では、そのような構造とインフレ危機の実相を、特に猛威に晒されているアジア新興国を例にして見てみる。

 グローバルインフレ危機の直接的な引き金となったのは原油高だ。

 6月27日に1バレル140ドルを突破したWTI原油先物価格は、7月3日には145ドルを超えた。その後7月8日には135ドル台に戻るなど、荒っぽい動きを見せている。ボラティリティーの高い状態が続く。

 1999年年初には10ドル、2002年年初に20ドルだった原油価格は、2005年には50ドルを越え、今年の年初には100ドルを超えた。50ドルを超えたあたりから、「すでに原油価格は実需給から乖離している」「投機資金が価格を底上げしている」と指摘されていた。要は「バブルだ」と。

 ところが、オーバーシュートの反動で急落してもよいはずの原油価格は、なかなか調整してくれない。多くの国にとって「原油価格の調整」は諸手を挙げて歓迎だが、その期待は裏切られ続けている。