週刊ダイヤモンド ここが見どころPhoto:PIXTA

これまでの王道とは異なるルートを歩んだ人物が社長に抜てきされる、あるいは次期の有力候補になるケースが相次いでいる。産業構造が変わるとき、事業や組織の構造を変革するとき、その変化は経営トップ層の顔触れに表れる。サブスク雑誌『Diamond WEEKLY(週刊ダイヤモンド)』3月14日号の第1特集は「トップ人事に異変! 出世レースの舞台裏」です。本特集で取り上げた記事を一挙に紹介します。(ダイヤモンド編集部)

 長年踏襲されてきた鉄板の出世ルートがある老舗企業や大企業は少なくない。例えば、祖業や長年主流の事業部門の出身であるか、営業、研究開発、人事、財務、経営企画など、その企業がキーに位置付ける「畑」の出身であるか。さらに派閥競争も加わって出世レース、頂点を巡る次期社長レースが繰り広げられてきた。この出世ルート、出世レースに異変が生じている。

 何しろ、入社すれば「一生勝ち組」とされてきた有名な大企業が、祖業や花形の事業で稼げなくなった。産業構造、事業環境が変わる中で次の稼ぎ頭を生み育てることが急務であり、事業構成の転換に迫られている。故に、次の稼ぎを生み出す原動力になる人物、転換を主導できる人物がトップに抜てきされてきているのだ。

 ソニーグループでは今春、祖業であるエレキ部門のトップが交代する。これにより同部門の現トップはグループ次期社長レースから脱落したといえるだろう。グループ次期社長の有力候補に挙がるのは、エンターテインメントにも精通している幹部たち。グループの主流がエンタメにシフトし、エレキの存在感は薄くなっていることを物語っている。

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 すかいらーくホールディングスでは、台湾現地法人の代表が社長に抜てきされた。これまでは国内の主要な事業会社での役員を経験していることがトップになる暗黙の条件だった。その条件を覆し、海外展開の強化を最優先した格好だ。

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 このほか今春の社長交代で、住友重機械工業の新社長は痛み覚悟で事業再編に着手すること、積水化学工業の新社長は非連続な成長で売り上げを拡大することをそれぞれ宣言した。

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(※編集部注:インタビューは就任前)

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次期社長レースで中途入社組に存在感
トップ機能を分担する「二人三脚型」も

 多くの日本企業が変革を迫られる中でリストラを断行して年功序列が崩れ、生え抜きを前提にした出世ルートも崩壊していく。優秀な人材は一つの会社に縛られずに転職するし、中途入社で迎えた会社も彼らを重用。次期社長レースで中途入社組が存在感を持つようになった。

 次期社長の最終選考期間に入ったキリンビールの後継者候補は、マーケティング畑の外資出身幹部と営業畑の生え抜き。「外様か、生え抜きか」の2択となっている。

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 武田薬品工業は外部からの幹部登用がすでに主流で、2代続けて外国人が社長に就任する。執行役員クラスで生え抜きの日本人はたった1人だ。

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 もっとも、会社側が変化を急いだとして、取引先や顧客、社員などが同じ思い、同じペースでついてくるとは限らない。そこを含めてどう布陣するか、である。

 三井化学は石油化学再編の真っ最中に社長交代へ。これはトップダウンによる構造改革を進めてきた新会長が業界再編を、調整力に長けた新社長が社内再編を担うという役割分担を狙ったものである。

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三井化学、社長交代の狙いは「二頭体制」の構築か…異例の“特命”会長と調整型社長が見据える業界・社内の再編の行方

 1人ではなく2人、あるいはチームでトップ機能を担うという選択は、三井化学に限ったものではない。三菱自動車は新会長と新社長の生え抜き2人による「二人三脚体制」、アクセンチュアは代表権を持つ取締役4人の「4人体制」になる。

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 就任5年目に入ったみずほフィナンシャルグループ(FG)の木原正裕社長はダイヤモンド編集部のインタビューで次世代リーダーに求める「五つの資質」を挙げ、それを社長一人ではなく、「チームとして兼ね備えにいくケースもある」と言及している。

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みずほFG木原社長が就任5年目の本音激白、後継者に必要な「5つの資質」と最高益の先にある「3つの志」

 トヨタ自動車しかり、伊藤忠商事しかり、創業家やカリスマ性のあるトップが君臨する会社は、求心力こそ強い。ただし、圧倒的な存在が常に正しい答えを持っているわけではない。

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 みずほFG社長の木原氏が示した五つ目の資質は、「自分をけん制してくれる役員」をそろえておくこと。チームであろうとなかろうと、独り善がりにならないことが重要なのだ。

「名は体を表す」のごとく、トップ人事は体を表す。社長とその周りの顔触れに経営の方向性や会社の風土が透け見える。企業ではないが、大手電力会社で構成される電気事業連合会(電事連)の会長人事は各社の不祥事に振り回されており、悪い意味でこれを象徴する。

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(※編集部注:その後、2月20日に新会長が就任)

 従来の固定化された出世ルートは、組織の独り善がりにもつながる。産業構造や事業ポートフォリオの変化、AIなどの技術革新が急速に進む時代を生き抜く柔軟性やスピード感を欠きやすい。トップ人事の異変はこの時代、至極当然の様といえる。

サブスク雑誌『Diamond WEEKLY(週刊ダイヤモンド)』3月14日号の第1特集「トップ人事に異変! 出世レースの舞台裏」では、ご紹介した記事をまとめてお読みいただけます。