【社説】トランプ氏の新たな保護主義時代Photo:Bloomberg/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領は2日、新たな「解放の日」関税を発表した。古くさい保護貿易主義時代の新たな始まりに向け、また大きく踏み出したことになる。この政策が続くと仮定すると(われわれはそうならないことを望んでいるが)、この取り組みは米経済と世界貿易システムを作り替える試みに等しい。

 本稿執筆時点で全容は明らかになっていないが、トランプ氏の関税は、「相互」とは名ばかりのようだ。まず、トランプ氏は世界の全ての国に対して、米国市場で物品を売るための10%の「基本」関税を課す。彼が「悪質な行為者」と見なす国々については、当該国が米国製品に課している関税率に、「為替操作」や非関税障壁のコストについての恣意(しい)的な推計値を足し合わせている。その上で合計を出し、その半分を関税として、当該国から米国への輸出品に適用する。

 トランプ氏は中国からの輸入品には34%の関税を課すが、同盟国である日本も24%という同様に高率の関税を払うことになる。欧州連合(EU)には20%、インドには24%の関税が適用される。われわれは今後さらに詳細を評価するが、きょうのところはこの新たな保護主義時代に既に明らかになりつつある影響の幾つかについて考えよう。

新たな経済リスクと不透明感

 トランプ氏が集中砲火のように課す関税が経済全体に与える影響は、知る由もない。その大きな理由は、各国がどのような反応を示すか分からないことだ。各国が米国に関税引き下げを求める交渉を試みるなら、ダメージは軽減される可能性がある。 だが、各国が報復措置を取る動きが広がれば、その結果、世界貿易の縮小や経済成長の鈍化、リセッション(景気後退)、あるいはさらに深刻な事態が生じかねない。

 米国の消費者と企業にとっては、確実にコストが上昇するだろう。関税は税であり、何かに課税すれば、対象となる物品の供給が減る。自動車価格は、米国車を含め、何千ドルも上がるだろう。トランプ氏は、高関税の壁によって競争から守られた企業・労働者へと消費者から富を移転させることを意図的に決定しようとしている。

 これはやがて、米国の競争力が徐々に低下することを意味するだろう。競争を鈍らせる関税は、利益の独占を招く一方で、イノベーション(技術革新)の必要性を低下させる。これは、1950年代および60年代の米国の鉄鋼・自動車産業の状況と同じだ。その後、グローバルな競争によって両業界の問題点が明らかになった。