
ドナルド・トランプ米大統領が自国の関税を、他のすべての国に関税を引き下げさせるための交渉手段と見なしているという見方は、もはや通用しない。この考えは常に非現実的だった。トランプ氏が26日、米国に輸入されるすべての乗用車とトラックに25%の関税を課す大統領令を出したことで、この幻想は消えた。トランプ氏は関税自体を望んでいるのだから、それに慣れるしかない。
トランプ大統領は関税の発表に際し、「わが国でビジネスをし、われわれの雇用を奪い、われわれの富を奪っている国々に対価を請求するつもりだ」と述べた。誰も米国人の昼食を盗んでいないし、貿易は双方にとって有益になり得るということを、彼に納得させようとしても無駄である。だが読者は、近いうちに自分の車の価格が上がり、おまけに選択肢が減りそうだということを知っておくべきだ。
トランプ氏は1962年通商拡大法232条に基づく「国家安全保障上の」脅威があるとして、自身が課した自動車関税を正当化している。トランプ氏が2019年にこの策略を試みた際にわれわれが論説で書いたように、彼はトヨタ車による攻撃を恐れているように見える。
米国にとっての「国際的脅威」であるカナダとメキシコは、米国の自動車輸入の約半分を占めている。残りのほとんどは、韓国・日本・欧州といった米国の同盟・友好国から輸入されている。米国で販売されるすべての自動車が国産でなければならない場合よりも、輸入車がある方が、米国民により多くの選択肢がより低価格で与えられる。そのため米国民は、数十年前に比べてより多くの、より良い車を買えるようになった。これはいったい誰にとっての安全保障上の脅威なのだろうか。