昨年から新NISAがスタートし、少しでも資産を増やしたい人が増えている。
だが、統計を見ると、投資に踏み切れていない人が多い。また、投資を始めても、多くの人が株価の下落に一喜一憂しているようだ。
そこで今回は、「『金持ち父さん 貧乏父さん』以来の衝撃の書!」と絶賛されているベストセラー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』の著者ニック・マジューリ氏の来日時に独占インタビューを行ったファンドアナリストの篠田尚子氏が登場。篠田氏は「読むと人生が変わる」と話題のベストセラー『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』著者スコット・ギャロウェイのPIVOT特別インタビューにも成功。つまり両者をインタビューした日本で唯一の人物だ。そんな篠田氏は『一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』をどう読んだのか。インタビュー秘話を盛り込んだ「特別寄稿第3弾」をお届けする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

「お金持ちになりたい」と思った時、二流は「夢を追求する」。では超一流は?Photo: Adobe Stock

「フォーカスの法則」が印象に残った理由

ニューヨーク大学で20年以上教壇に立つ人気教授、スコット・ギャロウェイ氏の『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』を読み終えたとき、私は、第2章「フォーカスの法則」に最も多く付せんを貼っていたことに気づいた。

その理由を考えてみると、私自身が頭の中で思っていても、うまく言語化できていなかった内容ばかりだったからだ。

ギャロウェイ氏は、経済的自立に到達するための要素として、
フォーカス+(ストイシズム×時間×分散投資)
という「富の方程式」を提唱している。

この方程式の「フォーカス」という概念は、「自分のエネルギーを何に、どう集中させるべきか」を明確にすることを指す。

「フォーカスの法則」の5大エッセンス

ここでそのエッセンスを一部紹介しよう。

・重要なことに「長期的視点で集中」する
人生において何に「フォーカス」するかが、その人の人生を大きく左右する。
重要なことにリソースを集中させ、短期的な利益や副業に目を奪われることなく、本業で確実に収入を得るべく、重要なことにリソースを集中させる。
なにより、「経済的自立」という長期的な目標に向けて努力を続ける。

・「夢」を追い求めるのではなく、「自分の才能」を追求する
夢を追うのではなく、自身の得意なことや才能を、時間をかけて見極め、それに合った分野に集中して突き詰めていけば、情熱は後からついてくる。
自分の才能を見極めることが難しい場合は、新しい状況に身を置き、まわりの人に尋ねてみてもいい。好奇心をそそられ、ワクワクするものを探ること。

・ハードに働きつつも、「コミュケーション力」は磨いておく
経済的自立を達成するには、人生の一定期間、生活の一部を犠牲にするようなハードワークが不可欠である。
これは心の整理にもつながる。
一方で、コミュニケーション力を磨くために、小説を読み、映画を見るなど、時間をうまく使おう。
キャリアを問わず、自分のアイデアを人に伝える能力は成功に不可欠であることが多い。

・会社ではなく「人」に忠誠心を持つ
会社は営利目的の組織である。
自分のことを第一に考えてくれるわけでも、永遠に覚えていてくれるわけでもない。また、忠誠心は人間同士の美徳であって、組織の美徳ではない。
自分に忌憚なく助言をくれ、「キッチンキャビネット」になりうる友人や同僚を大切にしよう。

・「キッチンキャビネット」に相談しながら適切な選択を行う
フォーカスとは、何をするかではなく、何をしないかである。
また、勝負に出るときこそ、勇気を持ってやめることも選択肢に入れておくべきである。
迷いが出たときもまた、「キッチンキャビネット」と相談して判断しよう(※篠田注釈:人生経験として若いうちに「広く浅く何でも挑戦する」ことと、ビジネスとしてのそれは意味合いが異なる。ギャロウェイ氏は必ずしも、キャリア初期から選択肢を狭めることを推奨しているわけではない)

オフィスに行って働こう

いかがだろうか。
ギャロウェイ氏の言う「フォーカス」とは、単に集中することではなく、自己認識に基づき、長期的な視点を持ち、選択と優先順位をつけ、自分の才能を最大限に活かすことを意味する。

また、インタビューで特に印象に残ったのは、「ワークフロムホーム(在宅勤務)ではなく、オフィスに行って働こう」という強いメッセージであった。

『富の方程式』の中でも言及されているが、20代30代は特に、仕事のやり方を学び、人脈を広げ、世の中を存分に知るためにも、まわりに人がいる環境で働いたほうが望ましいという。

これは、自分自身のキャリアを振り返ってみても強く感じることだ。
人と出会い、対話をしないことには、ギャロウェイ氏が繰り返しその大切さを強調する「キッチンキャビネット」の候補者にも巡り合えない。

多様性が容認され、個が尊重される現代では特に、誰か指摘してくれる人がいないと、自分にとって都合がいいことしか受け入れられなくなる危険性がある。

私自身がそうであったように、誰しも、その危うさに気づいていながらも、うまく言語化できずにモヤモヤした気持ちを抱いていたというのが実態ではないだろうか。

「オフィスに行こう」「ハードに働こう」というメッセージも含め、「フォーカス」には、現代の心地よい環境にガツンと衝撃を与えるようなインパクトがあるのだ。

(本稿は、『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』に関する書き下ろし記事です。)

【執筆者プロフィール】
篠田尚子(しのだ・しょうこ)
 
ファンドアナリスト。CFP®、1級FP技能士
日本で数少ないファンドアナリスト兼FPとして、資産形成の初歩的な解説から具体的な商品の提案に至るまで幅広くカバー。