株式投資界隈で話題の本がある。YouTubeで人気を博す栫井駿介氏の最新刊『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』だ。発売から1週間も経たないうちに増刷が決まるほどの大好評だ。
この物語に登場するのが、個人投資家たちがひそかに通うひばり投資診療所の冷酷な女医・忌部あかり。彼女の診療は、単なるアドバイスではなく、投資家として生まれ変わるための“荒療治”だ。作中でエリート商社マン・波野衿人を叩き直した忌部あかりが、今度はあなたの投資相談に乗る。
「買った株が下がって焦っている」「利益が出たのに、どこで売ればいいか分からない」「決算が良いのに、なぜか株価が暴落……」そんなあなたの迷いに、忌部あかりが診断を下す。優しくなんてしない。でも、あなたを勝てる投資家へと導くために。さあ、診察室へどうぞ――覚悟はできている?(構成/栫井駿介、ダイヤモンド社書籍編集局)

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S&P500は、保有したままでいい?

【相談内容】

去年からNISAでS&P500のインデックスファンドに積立投資を始めました。
最近、毎日証券会社の口座を開くたびに資産が減っていて不安です。これからもっと下がる気がするので、ここで一回売った方がいいのでしょうか?

大暴落のS&P500のインデックスファンド、売るべき? 買うべき?S&P500指数の推移。チャートは、TradingViewより提供

急落のS&P500、今後はどうなる?

―― S&P500のインデックスファンドに積立投資をしているのですが、毎日毎日、資産が減っています。売った方がいいのでしょうか?

忌部あかり(以下、忌部):そもそも、どうしてS&P500のインデックスファンドを買ったの?

―― えっと、SNSとかYouTubeで「アメリカ株のインデックスが最強!」ってよく見るし、GoogleとかAmazonとか世界的な企業が入ってるし、日本株より安心って……。

忌部:それならなんで売る必要があるの?

―― いや……含み益がなくなっちゃって、マイナスになる前に売ったほうがいいかと……。

忌部:で、売ったあとどうするの?

―― もっと下がったところで買い直そうかなって。

「下がったところで、たくさん買う」は、机上の空論

忌部:下がったところで、本当に買えるのかしら?

たしかに株価が下がったタイミングで買えれば理想的。でも、現実はそんな簡単な話じゃないわ。

暴落が続けば、「もっと下がりそうだ」とビビって買えないし、逆に上がり始めても「二番底が来る」なんて疑ってやっぱり買えないものよ。

不安で売る人は、結局どこで買えばいいかも判断できないのよ。だから、思い描いているような買い方なんてできず、株価の回復を指をくわえて見てるだけになってしまうの。

―― でもSNSを見てると「今後さらに暴落が来る!」「今後しばらくは低迷が続く」って言ってる人が、いっぱいいますよ? 暴落していく中で、何もせずに、黙って見てろっていうんですか?

忌部:これからもっと下がり続けるって確信したように言うけど、上がるか下がるかなんて誰にも分からないわ。

株価の予想なんて、上がるか下がるかだから、2分の1で当たるのよ。でも、本当に株価予想を当て続けてる人なんているかしら?

売った直後に株価が上がり始める可能性だってあるのよ。そしたら、結局売らなきゃよかったって後悔するんじゃない?

―― たしかに……

忌部:コロナショックの時のこと、覚えてる?

2020年の2月末から3月にかけて、株価はまさにジェットコースターのように急落した。ニュースでは毎日、感染者数と死者数が増えて、経済も社会もパニック状態。誰も経験したことない未知の出来事で「これからどうなるんだ」と不安に包まれていたわよね。

そんな混乱の真っ只中で、積極的に資金を投じていくことができた人なんて、果たしてどれほどいたのかしら?

その後、わずか1~2ヵ月でS&P500はV字回復して、8月には史上最高値を更新していたのよ。暴落してる中で、そんなことを確信できた人なんていたと思う?

後から株価チャートを見れば、「ここがチャンスだった」なんて言えるけど、先が見えない暴落の中で、積極的に資金をつぎ込んでいくことは、至難の業。

下がってる時ほど買えない。人間の心理って、そうできてるの。頭では分かっていても、気持ちがついてこないものよ。

積立投資は、“ムダな判断をしない”戦略

―― じゃあ、これから下がりそうだと思いながらも、このまま積立投資を継続するのが、いいのでしょうか?

忌部:あなた、積立投資でS&P500を買ってるんでしょ? それってつまり、買いや売りのタイミングをはかるようなムダな判断をせずに、淡々と買っていこうという戦略じゃない。

1~2年で一発当てて大金を稼ごうって話じゃなくて、じっくり資産を積み上げる投資なんじゃないの?

だったら、目先の株価予想に振り回されるのは愚かよ。一番やっちゃいけないのは、投資から降りてしまうこと。長い目で見れば上がっているのだから、上昇を逃さないために、投資し続けることが大切よ。

※本記事は、『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』(栫井駿介・著)の登場人物・忌部あかりをもとにしたフィクションです。