買った株が急落……どうすればいい?──そんな瞬間に身に覚えがないだろう? 買った途端に値下がりし、パニックになって売却。ところが、その後じわじわと回復して「売らなきゃよかった」と後悔したことがある人は多いはず。逆に、損切りをためらって「そのうち戻るはず」と持ち続けた結果、含み損がどんどん膨らみ、身動きが取れなくなってしまうことも。株式投資で本当に利益を出している人は、こうした局面でどう考え、どう行動しているのだろうか? 話題の新刊『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』では、YouTubeで株式投資のアドバイスを配信し人気を博す栫井駿介氏が「利益を出せる個人投資家の思考法」をわかりやすく解説する。株価の乱高下に振り回されず、冷静に判断できる投資家になるためのヒントが満載の話題作だ。この記事では、特別に本書の一部を公開する。

「驚異的リターンの投信」に飛びついた個人投資家の7割が損失…その理由とは?Photo: Adobe Stock

驚異的パフォーマンスの投資信託を買い、損をした個人投資家たち

 バフェット以外でインデックスファンドを大きく上回る実績を残したものとしては、マゼラン・ファンドという投資信託を運用していたピーター・リンチの事例があります。

 彼は1977年から1990年までの約13年間運用し、ファンドの資産を約1800万ドルから約140億ドルに成長させました。年平均リターンは約29%という驚異的な成果です。

 バフェットからも一目置かれ、リンチが言った「花を摘み、雑草に水をやる」というフレーズはバフェットも大変気に入ったそうです。

 しかし、このマゼラン・ファンドには後日談があります。

 ファンド自体はトータルで驚異的なパフォーマンスを残したのですが、ファンドに投資した人の実に7割は損失を出して終わったというのです。

 おそらく、個人投資家の多くは「すごいファンドがある」という評判に飛びついて買ったものの、一時的な株価の下落に落胆し、売ってしまったのでしょう。

 実際に、リンチの運用は中小型株にも多く投資する「積極型」の投資だったので、価格の変動は非常に大きかったのです。

 それを知らずに買い、あっという間に大きく下がってしまったら、知識のない個人投資家はびっくりしてしまうでしょう。

 このケースでうまくやるためには、ファンドが素晴らしいということに加えて、それを購入する個人投資家自身にも「リテラシー」が必要だったということになります。

 つまり、マゼラン・ファンドを購入するなら、そもそも価格変動が大きいという特性を理解し、もし下がった時にはどうすべきかということを考えながら投資する必要があったのです。

 リンチは中長期的な目線で投資を行っていましたから、それを購入する投資家も同じ目線でなければならなかったのです。

投資信託で資産を増やすための秘訣

 このことは必ずしもマゼラン・ファンドに限った話ではなく、インデックスファンドについても同じことが言えます。

 そもそも株式にはどのような性質があり、どんなことに注意が必要なのか。最低限その知識を持つことが、ファンドをうまく使いこなす秘訣と言えるのです。

 それは必ずしも、投資について専門家のように深く理解しなければならないということではありません。

 例えば、普段車に乗る人でも、エンジンやハンドルの仕組みを詳しく理解しているわけではありませんよね。

 一方で、少なくとも「こうやって運転する」「こういうことをしてはいけない」という運転方法を教習所で教わり、免許を取得します。

 金融リテラシーとは、自動車でいうところの運転免許を持つことです。車の運転と同じように、投資を始める人には最低限の「教習」は必要だと言えるのです。

(本記事は『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』の一部を抜粋・編集したものです)