
Photo: Paul Ratje for WSJ
【メキシコ市】ドナルド・トランプ米大統領による第1弾の関税措置と貿易を巡る脅しを受けてメキシコは守勢に立たされた。だがトランプ氏は今や世界中を標的にしており、メキシコは突如として、ライバルの製造拠点よりも優位に立つことになった。
メキシコはトランプ政権が9日に発動する関税を逃れる一方、メキシコと同様に低コストの労働力を持つ世界的な輸出大国の中国とベトナムは標的になった。非米国製の自動車部品への25%の新たな関税など、一部の関税はメキシコも対象だ。しかし、メキシコの対米貿易の大半は米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の下で関税の適用除外になっている。
「新たな関税はメキシコの競争力を高めるものだ」。米国とメキシコの国境沿いで十数カ所の工場を運営する米ニアショア・カンパニーの共同最高経営責任者(CEO)、ホルヘ・ゴンサレス・ヘンリクセン氏はそう話した。
生産や供給の拠点を米国に近い地域に移転するいわゆる「ニアショアリング」を検討する企業にとってメキシコは格好の場所であり、トランプ氏の新たな関税政策でも当面はメキシコのそうした地位に変化はない。フォーリー・アンド・ラードナー法律事務所のパートナー、グレッグ・ヒュージアン氏は、米中貿易戦争の範囲が狭く製造業の移転も限定的だった第1次トランプ政権時代と比べ、今回米国が貿易障壁をさらに拡大すれば、メキシコへのニアショアリングは活発化することが考えられると語った。
中国は米政権による既存の関税に加えて34%の追加関税の対象になっている。中国が報復措置を発表したことを受け、トランプ氏はさらに 50%の追加関税を課す考えを表明 した。ベトナムには46%の関税がかけられる。