トランプ関税、狙いは世界経済秩序の再構築「解放の日」にローズガーデンで関税を発表するトランプ氏(英語音声、英語字幕あり)Photo: Mark Schiefelbein/AP

 米国は自ら構築した世界貿易秩序を破壊し、不確実な新時代を開こうとしている。

 ドナルド・トランプ米大統領の2日の発表は、世界の経済関係を作り変えようとするいちかばちかの賭けだ。米経済は他の先進国がうらやむほどうまく新型コロナウイルス禍を切り抜けたが、トランプ氏の目には米国が数十年間にわたり、世界から搾取されてきたと映る。

 同氏の関税を巡る動きはスタグフレーションの可能性を高めるものだ。物価が上昇すると同時に、米国をはじめ多くの国がリセッション(景気後退)に陥るリスクにさらされる。

 トランプ氏は主要貿易相手国に対する関税引き上げを発表し、市場に衝撃を与えた。全輸入品に一律10%の関税をかけた上で、国ごとに相互関税を課し、関税率は欧州連合(EU)が20%、中国が34%となる。JPモルガン・チェースによると、全体の加重平均関税率は昨年の2.5%、発表前の10%から23%に上昇し、ここ100年余りで最も高い水準となる。

 トランプ氏の政策転換がこのまま実施されれば、その影響は1971年にリチャード・ニクソン大統領が決めた金1オンス=35ドルの固定相場制の廃止に匹敵する可能性がある、とエコノミストは指摘する。

 モルガン・スタンレーの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・ゲイペン氏は「米国の税制・貿易構造を根本的に再構築しようとする試みとしては、1970年代初頭にニクソン氏が金本位制を廃止して以降でおそらく最大規模だ」と述べた。

 ゲイペン氏によると、モルガン・スタンレーは関税リスクに関する市場の見通しが甘いと顧客に助言していたが、2日の発表は「われわれの予想をも上回る規模だった」。