
【ワシントン】米国のハワード・ラトニック商務長官は数カ月にわたり、ドナルド・トランプ大統領の通商政策を米企業に売り込もうとしてきた。だが企業経営者らは、ラトニック氏が何を望んでいるのかよく分からないことが多いと話す。
ラトニック氏はトランプ政権発足後の数カ月間、大車輪の働きぶりを見せてきた。関税協議を主導し、数十人の企業経営者と会談。テレビにも出演し、トランプ氏の隣に立っていることも多い。
米金融サービス大手キャンターフィッツジェラルドの最高経営責任者(CEO)だったラトニック氏は今や、企業経営者や政権高官をいら立たせるようになった。彼らはラトニック氏との対話後に怒りを覚えることがあったと、同氏と話した十数人は明かしている。
企業経営者らとの非公開会合で、ラトニック氏はトランプ氏の関税を支持するよう経営者らを威圧する一方、時には同情を示し、各社を支援したいと伝えている。ラトニック氏は主要な問題で矛盾した立場を取っており、それは特定の輸入品を関税から除外すべきかどうかについても同様だと経営者らは話す。
63歳のラトニック氏は、株式市場を揺るがし世界各国政府を不安にさせている、トランプ氏の破壊的で好戦的な通商政策の最前線に立っている。トランプ氏が先週、広範囲に及ぶ関税を発表した際、ホワイトハウスのローズガーデンで同氏の隣に立っていたのはラトニック氏で、数十カ国に対する懲罰措置を説明する大きな図表を手にしていた。トランプ氏の側近らによると、同氏の通商政策が米国を景気後退(リセッション)に陥らせるとの見方が広がる中、経済的な影響を管理しようとしているのもラトニック氏だという。
株式市場が急落する中、ラトニック氏に対する不満が表面化している。トランプ氏の支持者であるヘッジファンドマネジャーのビル・アックマン氏は、ソーシャルメディアでラトニック氏を批判した。同氏に対するいら立ちは、政策を土壇場で覆すことで知られる大統領を代表することの難しさを反映している面もある。