異動の季節、新任リーダーとして初めてチームを率いる人も多いはず。最初こそ意気込んでしまいがちだが、そんなときこそ「関係づくり」の基本に立ち返る必要があるもの。では、新任リーダーが最初にやるべき“たった一つの行動”とは、どのようなものなのでしょうか?
『冒険する組織のつくりかた』著者である安斎勇樹さんと、『組織の体質を現場から変える100の方法』を刊行した沢渡あまねさんに、リーダーとして最初に取り組みたい「関係づくりの方法」について語ってもらいました(ダイヤモンド社書籍編集局)。

【新任リーダー必見】「チームづくり」より先にやるべき“意外すぎる初手”とはPhoto: Adobe Stock

いきなり「チームづくり」をしないほうがいい理由

Q. 新任リーダーが最初にやるべきファーストステップの行動には、どんなものがあるでしょうか? 「まずこれをやっておくといい」というものがあれば、ぜひ知っておきたいです。

安斎勇樹(以下、安斎) 新任リーダーって、つい「チーム全体としてどう進めるか?」という大きな構造から考えようとしがちなんです。でも、最初にやるべきは「一人ひとりとの関係性づくり」だと思うんですよね。

【新任リーダー必見】「チームづくり」より先にやるべき“意外すぎる初手”とは『冒険する組織のつくりかた 「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』 安斎勇樹(著)、448ページ、定価2640円(本体2400円+税10%)、発行:テオリア、発売:ディスカヴァー・トゥエンティワン

沢渡あまね(以下、沢渡) たしかに、「まずチームビルディングをしないと…」と身構えてしまう人、多いですよね。でも結局、信頼って一対一の関係性のなかでしか積み上がらない。

安斎 だからまず、1on1をしっかりやるのをおすすめしたいです。メンバー一人につき1~2時間くらい、業務とは直接関係ないことも含めて、じっくり話すことからはじめる。

沢渡 「そんなに時間を使っていいの?」って思う人もいると思いますけど、あとからじゃ取れないんですよね、こういう時間って。

安斎 本当にそう。関係性づくりのための時間は、意識して最初に仕込んでおくべきだと思います。

「あなたの今期の目標は…」というような面談の場とはきっちり分けて、「これまでどんな仕事をしてきたんですか?」「学生時代はどんなことに興味がありましたか?」「いまの趣味は何ですか?」みたいな自己紹介的な対話をしていく。まずはリーダー自身のほうから先んじて自己開示をしていくといいと思います。

信頼は「あとで取り返す」のではなく「先に仕込む」もの

沢渡 私もまったく同感で、信頼って“先に仕込んでおくもの”なんですよね。

【新任リーダー必見】「チームづくり」より先にやるべき“意外すぎる初手”とは『組織の体質を現場から変える100の方法』沢渡あまね(著)、384ページ、定価1980円(本体1800円+税10%)、ダイヤモンド社

安斎 成果が出てからじゃなくて、出る前に信頼をつくっておく。

沢渡 そうそう。リーダーになりたてのうちに「信頼の貯金」をしておけば、チームの空気がぐっと柔らかくなるし、あとから困ったときに助け合える土台になる。

安斎 そして、最初に信頼を築けていると、困っているときにも“声を上げやすくなる”んですよね。これってじつは、すごく大事なことだと思っています。

「冒険」は一人では始まらない――「縦・横・斜め・外」と対話する意味

沢渡 もう一つ大事なのは、関係づくりの対象を「部下だけ」に絞らないことだと思っています。

安斎 「縦・横・斜め・外」ってやつですね。

沢渡 はい。新任リーダーこそ、上司、他部署、さらには社外のマネジャーとも話すことを意識したほうがいい。「自分はなぜこの役割に任命されたのか?」「何を期待されているのか?」――これを、いろんな人との対話を通じて確かめていく。

安斎 そうやって上司-部下「以外」のネットワークをつくっておくと、リーダーも自分ひとりで問題を背負い込まずにすむんですよね。自然と「チームでどう冒険するか?」という視点が持てるようになる。

沢渡 まさに「冒険」は一人ではできない。だからこそ、最初は「対話を大切に」。このひと言に尽きると思います。

(本稿は、『組織の体質を現場から変える100の方法』の著者・沢渡あまねさんと、『冒険する組織のつくりかた』の著者・安斎勇樹さんによる対談記事です)