日本人としては少し複雑な思いも抱きながら、次に、現役の日産の販売店を訪れた。店内は閑散としていて、アフターサービス待ちの客が座っていた。
店員に話しかけると、「セレナ」と「Kicks e-power」、「リヴィナ」を紹介された。ただ、思った以上に高かった。現地生産をしていない輸入車だからだろうか、セレナのガソリン車はおよそ5億6000万ルピア(約560万円)、Kicksは5億2200万ルピア(約520万円)、リヴィナが約3億3000万ルピア(約330万円)。トヨタ車やホンダ車に比べて割高な感じが否めない。
整備が終わるのを待っていた男性(50代)に話を聞くと、「日産ファンでセレナに乗り続けているんだ」。10年来の日産車ユーザーだという。続けて、「インドネシアの工場が終わって、今度はタイの工場も閉鎖するんだって?残念だね。部品の調達が遅れてアフターサービスの質が落ちないか心配だよ」と気になることを教えてくれた。
『そりゃ売れないわけだ…日産自動車の販売台数が「砂粒レベル」で涙目になる国とは?』では、2000年代後半~10年代前半はインドネシア市場で“そこそこ”成功していた日産がなぜ落ちぶれてしまったのか、なぜ低価格ブランド「ダットサン」は失敗したのかを詳しく分析する。
ホンダとの経営統合が破談した日産は、再建策としてタイの工場を閉鎖する。タイではスズキが工場閉鎖、ホンダも生産能力を半減し、スバルも生産撤退する。さながら日系自動車の生産撤退ラッシュだ。インドネシアの自動車市場における変化が、近い将来タイでも起きる気がしてならないのは、筆者だけではないだろう。


