前述したインドモービルはインドネシア有数のディストリビューターで、日産以外にも複数ブランドの販売代理を手がける。1990年代から日産車を販売し、2020年8月には日産のインドネシア販売会社の株式の大半を引き受け、筆頭株主として事業運営するようになった。
ここで注目したいのが、最近のインドモービルの動向だ。昨年からジャカルタやバンドンの7拠点で、中国EVのAIONのショールームをオープン。これら7拠点はいずれも元日産・ダットサン販売店で、日産車のメンテナンスサービスを続けながら、中国EVを併売する形態に転換したのだ。
多様化する市場のニーズに合わせて、販売業者が柔軟に複数ブランドを扱うのはインドネシアでは決して珍しいことではない。が、日産の工場閉鎖の影響が、こうした業態転換を加速させたとも言える。なお、AIONは現地生産を開始すべく、昨年から工場建設中だ。
女性店員に売れ行きを聞くと、「AION Vはすでに1000台の契約がありましたよ」。「キャッシュ一括で買っていくパターンが多いですね。基本的には富裕層のセカンドカーとして使われるようです。でも、ローンで買うお客さまも増えています」と教えてくれた。
一応、日産についても聞いてみる。「はい、もともと日産の販売店で、もうモデルカーは置いていませんが、販売とアフターサービスは請け負っています。店の裏の整備場で作業しています」「日産車はまだ普通に市内を走っているし、アフターサービスのお客様なら店に来ますよ。工場が閉鎖してしばらく経ちましたが、NISSANという名前自体はみんな知っていると思います」(同)
この店員は、ここが日産店の頃から働いているという。「このお店はインドモービルのもの。AIONとも契約したから、AIONをメインで売るようになったんです」「AIONの方が、勢いがあるというか、売るぞ!って気合い満々です。店の雰囲気が明るくなった気がしますね」(同)


